連続テレビ小説「花子とアン」第1回「花子と呼んでくりょう!」【第1週】

ふじ「ほりゃあ 何ずらか?」

吉平「絵本じゃ。」

はな「てっ! 絵本?」

かよ「食うもんが よかった…。」

吉太郎「食うもんが よかった…。」

ふじ「誰が読むでえ?」

吉平「誰って…。」

周造「そうさな。 ここんちじゃ 婿殿しか 字ぃ読めんだからな。」

はな「てっ! 本じゃん! 本物の本じゃんけ。 おら 初めて 本に触った。 夢みてえじゃん。」

吉平「はな! 夢みてえか?」

はな「うん! おとう ありがとう。」

吉平「やっぱし はなは おとうの子じゃ。」

ふじ「はなも飯にしろし。」

吉平「はな 逆さまじゃ。」

はな「あっ こうずらか。」

吉平「はなは 1年生ずら? 学校で 字は習っとらんのか?」

ふじ「うちの手伝えが忙しくって 学校にゃ 一日も行っちゃあいん。」

吉平「てっ! 一日も?」

ふじ「あんた 知らなんだだけ。」

周造「そうさな。 一年のうち 半分も うちにいねえだからな。 頂きます。」

道中

吉平「ほら はな 急げ! 今日から 学校行くだよ。」

はな「学校?」

吉平「これまでの後れを取り返すだ。」

はな「おとう! おら 学校なんか 行かんでいいだよ。 ももの子守りがあるし うちの手伝えしなきゃならんだよ。」

吉平「はなは うんとこさ 本が好きじゃん? ほれなのに 字が読めん。 あんまり ふびんで おとうは ほっとけん。」

はな「ふんだけんど おらは…。」

尋常小学校

正門

(鐘の音)

<はあ… 夢にまで見た学校でした。>

はな「学校じゃん。 学校じゃん! おとう! 学校じゃん! 学校じゃんけ!」

吉平「はな! 転ぶじゃねえよ!」

教室

本多「新しく入学した 安東はなさんずら。 おまんら 仲良くしろし。」

生徒たち「はい!」

本多「とりあえず こけえ座れ。」

はな「はい。」

(笑い声)

武「おまん 今まで 学校来ちゃいんから ほんなこんも 分からんだか。」

はな「おら 先生に言われたとおり やっただけずら。」

(笑い声と戸が開く音)

本多「椅子に座れってこんだ。」

吉平「はなの言うとおりじゃ! 先生の言い方が間違っとる。」

本多「余計なこん 言わんでくれちゃあ。」

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