修和女学校
講堂
蓮子『ロミオ・モンタギュー。 あなたの家と 私の家は 互いに憎しみ合う宿命。 その忌まわしいモンタギューの名前を あなたが捨てて下さるなら 私も 今すぐ キャピュレットの名を捨てますわ』。
醍醐『名前が何だというのであろう。 ロミオの名前を捨てたところで 私は 私だ!』。
蓮子『ええ。 バラは たとえ ほかの どんな名前でも 香りは同じ。 名前が 何だというのでしょう』。
はな「そうかな…。」
畠山「どうしたの? はなさん。」
はな「ここ どうしても気になるんです。 『バラは たとえ ほかの どんな名前でも 香りは同じ』と シェークスピアは 言ってますが もし バラが アザミとかキャベツなんて名前だったら あんな すてきに 感じられるのかしら? 私のおとうが 吉平ではなく ゴンベエっていう名前だったら おかあは 好きになってるかしら…。」
醍醐「つまり はなさんは 何が言いたいの?」
はな「やっぱり 名前は 大切ですよね。 あの… ここのセリフ 変えたいんですけど…。」
畠山「はなさん。 悪いけど そんな時間は ないわ。 このまま いきましょう。」
はな「分かりました。」
畠山「では 今のところから もう一度。」
醍醐『名前が 何だというのであろう。 ロミオの名前を捨てたところで 私は 私だ!』。
蓮子『ロミオ様 それは どうでしょうか。 もし バラが アザミやキャベツという名前だったら 同じように 香らないのではありませんか? やはり 名前は 大事なものです』。
醍醐「勝手に セリフ変えないで下さい!」
はな「そのセリフの方が ずっといいわ! 前より 意味が深まって聞こえます。」
畠山「そうね。 じゃあ それでいきましょう。」
はな「さっきは すてきな即興のセリフ ありがとうございました。」
蓮子「シェークスピアのセリフに けちをつけるなんて はなさんも 相当ひねくれてるわね。」
はな「そうですね…。」
蓮子「はなさんのお父様とお母様は 好き合って結ばれたの?」
はな「ええ まあ。 行商で甲府に来た父が ブドウ畑で倒れて 母に助けられたんです。 父は 母に 旅先での話を いろいろしてくれて 母は もっと話が聞きたいと思って 結婚したんです。」
蓮子「そう…。」
<はなは 思いました。 もしかすると 蓮子様は 望まない相手と結婚させられたのかもしれない。 まるで ジュリエットのように。>