連続テレビ小説「花子とアン」第49回「はな、お見合いする」【第9週】

徳丸「啓太郎君は 望月家のブドウ酒造りを 任されてて ブドウ酒造りの勉強ために 外国へ行く事も考えておいでだ。 おまんが 母親に苦労かけてまで 勉強した英語も 役に立つら。」

はな「はあ…。」

ふじ「外国ですか。」

徳丸「な~に ちっとの間だけだ。 啓太郎君は 甲府を離れるつもりは ねえ。 一生 この土地で暮らすだと。」

望月「生まれ育った この甲府の町が 好きなんです。」

徳丸「ふんだから はなが嫁いでも 帰りてえときゃあ いつでも実家に帰れるだよ。」

ふじ「はあ… ほうですか。」

徳丸「ほれと この縁談がまとまった暁にゃあ はなには 先生辞めて うちに入ってほしいだとう。 ほうだけんど 聞いて驚け。 使用人を雇うから 家事や育児の苦労は 一切 かけねえ。 物書きや好きな事 何でも やっていいと おっしゃってくれてるだ。」

ふじ「てっ! 本当ですか。」

望月「はい。」

徳丸「おい はな。 おまんにとって こんないい結婚相手は いねえら。 ふんじゃあ まあ あとは 若い2人で ごゆっくり。」

望月「緊張するですね…。」

はな「あっ はい…。 私も さっきから 喉がカラカラで…。」

望月「フフフ。 はなさんの書かれた童話…。

はな「『みみずの女王』ですか?」

望月「本当 面白かったです。」

はな「てっ 読んで下さったんですか? ありがとうごいす。」

望月「いい ご趣味でごいすね。」

はな「えっ?」

<はなにとっては 趣味じゃないんですけれども…。>

安東家

居間

もも「ほれで? あとは 何 話したでえ?」

はな「望月さん おとうが もう何年も うちに帰ってこねえのも 知ってただよ。」

もも「ほれで?」

はな「うちの家族の面倒は 全部見るって約束してくれた。 何なら 望月さんとこの近所に 新しく家を こせえてもいいって。」

もも「てっ! おらたち 新しいうちに引っ越せるだけ?」

はな「この縁談がまとまったらの話だよ。」

リン「よかったじゃん! おめでとう! ふじちゃん 親孝行な娘持って 幸せじゃんね~。」

はな「ち… ちっと待って! まだ決まった訳じゃ…。」

リン「はなちゃん! 迷ってるだけ!?」

もも「迷う事ねえら。 おら 賛成だ。」

リン「ほうさよう。 相手は 金持ちで 一生 金の心配しいなんでいい。 ほの上  顔もよくて いい人なら 断る理由がねえ。 いい事ずくめだけんど いっとう いいのは 地元の人ちゅう事だ! ほら ふじちゃんからも 何か言ってやれし。 よそもんと結婚したせえで おまんは えれえ苦労してるら?」

ふじ「ほうだねえ…。」

リン「婿殿は 家族ほっぽらかして もう 帰ってこねえんじゃねえかって みんな 言ってるだよ。」

はな「ほんなこん ねえよ! おとうは 必ず帰ってくるだよ。」

吉太郎「はな。 見合いの返事 どうするだ?」

はな「うん…。 いい話だとは思う。 いい人そうだったし。 望月さんと結婚すれば 甲府を離れなんでいい。 うちの借金もなくなる。 ほれに もう お金の心配しないで 自由に 好きなものを書いて暮らせる。 もってねえような話だけんど…。 兄やんは どう思う?」

吉太郎「おじぃやんと おかあ残して 兵隊行くのが 気がかりだったけんど はなが 結婚しても 近くに住んでくれりゃあ 安心して行けるじゃん。 いい男じゃん。 おらが女だったら すぐに結婚承知するさ。」

はな「兄やん… 真面目な顔して 冗談言わんで。」

吉太郎「はな。 旦那さんに 愛想尽かされねえように 尽くすだぞ。」

はな「気が早いら。」

吉太郎「おらは はなの父親代わりだからな。」

はな「兄やん…。」

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