尋常小学校
1914年(大正3年)・3月
♬『あおげば尊し』
校庭
「みんな この花見るだよ。 これを見るだよ。 これを見るだよ。 撮りま~す。」
(シャッター音)
「はい 撮りました。」
廊下
本多「2人とも この1年間 よく頑張ったな。 特に安東はな。 初めは落第教師だった おまんが どうにか よく持ちこてえたな。 卒業する生徒らに おまんらしい 励ましの言葉を贈ってやれし。」
はな「はい。」
教室
はな「皆さん ご卒業 おめでとう。 5月にお引越しした 小山たえさんから 今日 お手紙が届きました。」
「てっ!」
「たえから?」
はな「読みます。 『はな先生 6年生のみんな お元気ずらか? みんなは もうすぐ卒業ですね。 おらは 今は 学校に行ってねえけんど 時々 そこの教室に 遊びに行きます。 想像の翼を広げて みんなと一緒に 笑ったり 勉強したり お弁当を食べたりしてるだよ。」
はな「こないだ おとうが一冊の本を 買って届けてくれました。 ほこに はな先生の 『みみずの女王』が載ってて ドキドキしながら読みました。 読むと笑えて 胸の奥の ポッと 明かりがともったみてえに 元気になるだよ。 おら 元気で頑張ってるから みんなも頑張れし。 アイ ラブ ユー。 サンキュー たえ』。 おしまい。」
(拍手)
はな「たえさんは 卒業できなんだけ みんなが こうやって 6年間 学校に来られたのは 家族の応援があったから。 遠くの町へ奉公へ行く子 おうちの仕事の手伝いをする子 上の学校へ行く子。 これっから いっぺえ つらい事は あるとは思うけんど みんなが どこにいても 家族が見守っててくれてる事を 忘れんように。 はい。 ふんじゃあ 皆さん お元気で。 ごきげんよう。 さようなら。」
生徒たち「ごきげんよう! さようなら!」
はな「案外 あっさりしたもんじゃん。」
生徒たち「はな先生!」
はな「てっ!」
生徒たち「先生! ありがとうございました! サンキュー! アイ ラブ ユー!」
「はな先生!」
「はな先生!」
はな「ありがとう!」
<アイ ラブ ユー。 ごきげんよう。 さようなら。>