蓮子「何ですって!?」
嘉納「近いうちに 先方と 食事するごとになったき いいな。」
冬子「おとっちゃん…。」
蓮子「冬子さんが かわいそうだと 思わないんですか!?」
嘉納「何を言う! 冬子の幸せを思っちょるきこそ この縁談を 持ってきたとやないか!」
蓮子「冬子さんは それでいいの?」
嘉納「わしの言うとおりにしちょったら 間違いないき!」
蓮子「横暴です!」
黒沢「お嬢さんの事を一番に考えて どうか 冷静に話し合って下さい。 私は これで失礼します。」
蓮子「あなたは ひきょう者です! 私に隠れて 縁談を進めるとは!」
嘉納「冬子のため思うて決めた事たい。 お前は 口を出すな!」
蓮子「冬子さんは まだ若いんです! もっと教養を身につけて 自分の可能性を広げるべきです!」
嘉納「おなごんくせに 学問やらせんでよか! 学のあるおなごは わしは好かん!」
蓮子「じゃあ なぜ 私と結婚などしたんですか!」
嘉納「そら… ほれたとたい。 見合いで会うた時… その まあ… 何ちゅうか… いわゆる 一目ぼれっちゅうやつて。」
蓮子「人目ぼれ? 初めて伺いました。」
嘉納「お前… 信じちょらんな!?」
蓮子「信じろという方が無理です! 『学のあるおなごは 好かん』と おっしゃった その口で!」
嘉納「ああ言えば こう言う! かわいげのないやつばい!」
蓮子「お聞きします! あなたは 私の どこを 好きになったんですか!」
嘉納「お前の 華族っちゅう身分と そん顔たい!」
蓮子「身分と顔? そんなの愛じゃないわ! あなたは 何一つ 私を理解しようと なさらないじゃありませんか!」
嘉納「黙らんか! お前の身分と顔以外… どこを愛せちいうとか!」
安東家
居間
ふじ「(ため息)」
はな「おかあ…。」
周造「腹の具合でも悪いだか?」
はな「ここの具合ずら。」
周造「ああ そうさな…。」
ふじ「あっ いや… 元気だ。」
周造「ごっそさん。 畑は わしがやるから ふじは 休んどけし。」
ふじ「この忙しい時に休んでなんか…。」
周造「いいから ちょっくら休めし。」
はな「おじぃやん 1人で大丈夫け。」」
周造「ほら はなも学校遅れるら。」
教会
図書室
朝市「おはようごいす。」
吉平「おお 朝市。」
朝市「おじさん これ 食べてくりょう。」
吉平「おお すまんな。 ふじは まだ怒ってるずらか?」
朝市「多分。」
吉平「ほうずらな…。」
朝市「おじさん。 おばさんと こぴっと話した方がいいですよ。」