カフェー・ドミンゴ
玄関前
はな「村岡印刷か…。 こぴっと届けるしかねえ。」
宇田川「あの男は 結婚してたんじゃないかしら。」
はな「あの男って…。」
宇田川「だから 抱き締めた翌日 『ゆうべの事は忘れて下さい』と 言い放った男よ。 作家の勘ではね 彼には 妻がいたのよ。 あなたも大変だったわね。」
はな「あ… 宇田川先生! だから それは 友達の事で 私は 大変なんか 全然…。」
宇田川「まあ 頑張って。 原稿 無くさないで届けてね。」
はな「こぴっとしろし。」
村岡印刷
はな「ごきげんよう。 聡文堂です。 あの… こ… この原稿を 至急 『にじいろ』のページに 組み版して頂きたいんです。」
英治「分かりました。 確認します。」
はな「はい。」
英治「あ… 宇田川先生 書いて下さったんですか。 よかったですね。」
はな「ええ…。 では よろしくお願いします。」
英治「できるだけ 早く 組み版して 弟に届けさせます。」
はな「では 失礼します!」
かよ宅
(猫の鳴き声)
居間
はな「(ため息)」
かよ「お姉やん… 眠れんの?」
はな「てっ… ごめん。 起こしちまったけ?」
かよ「今日 村岡印刷に行ったら? 大丈夫だったけ?」
はな「ああ… 村岡さんの事? もう 忘れた 忘れた。 奥さんのいる人だって 分かった途端 ただの物体に見えたさ。」
かよ「物体?」
はな「うん。 大きくて邪魔な か… 壁じゃん。 うん。」
かよ「お姉やん 無理しんで。」
はな「てっ 無理なんて…。」
かよ「お姉やんのこんだから きっと 仕事場では うんとこさ 無理して頑張ってるら。 おらの前まで 無理しんでいいだ。」
はな「かよ…。」
かよ「お姉やんが 本気で好きんなった人 ほんな簡単に 嫌いになれる訳ないじゃん。 おやすみ。」
はな「おやすみなさい。」
聡文堂
郁弥「お待たせしました!」
梶原「みんな! 届いたぞ。」
<2週間後 ついに 『にじいろ』の 創刊号が完成しました。>