連続テレビ小説「花子とアン」第80回「ゆれる思い」【第14週】

村岡印刷

梶原「何してるの?」

はな「あ… いえ。」

(ノック)

梶原「こんにちは。」

郁弥「ああ… わざわざ お越し頂いて すいません。 あいにく 兄は 出かけていて。」

梶原「そう。 今日は 英治君にも お礼を言いたかったんだけど。」

郁弥「くれぐれも 梶原さんに よろしく伝えてくれと 言っていました。」

(ドアが開く音)

郁弥「社長。」

平祐「やあやあ。 『にじいろ』創刊 おめでとうございます。 どうぞ。」

はな「てっ… ミスター ドミンゴ!」

平祐「やあ 『みみずの女王』。」

梶原「何だ 安東君。 知り合いだったの?」

はな「カフェーで 何度か お目にかかりました。」

郁弥「僕も忙しくて行けないのに 父さんは あの店に行き過ぎなんだよ。」

はな「父さん?」

郁弥「はい。 社長で父です。」

はな「という事は… ご兄弟のお父様…。」

梶原「安東君 今日は おかしいぞ。 大丈夫か?」

平祐「やっぱり 君は 田舎に帰った方が いいんじゃないかね。」

はな「そんな…。」

平祐「あまり 編集者として優秀になると 女性は 生意気になるからね。 この辺で帰った方がいい。」

梶原「あの これ つまらないものですが。」

平祐「ありがたく頂戴します。 ほう ウイスキーとは また。」

梶原「最近 凝ってまして。」

平祐「しかし いい雑誌に仕上がりましたな。 『にじいろ』は これから 長~く 愛される雑誌に成長しますよ。」

梶原「社長に そう言って頂けると 自信がつきますよ。 社長。 郁弥君。 この度は 『にじいろ』創刊へのご尽力 本当に ありがとうございました。」

はな「ありがとうございました。」

梶原「いや~ あの『王子と乞食』のページ すばらしい出来栄えです。」

はな「はい。 本当に すてきなページに して頂きました。」

平祐「英治は あのページ えらく入れ込んでましたよ。」

郁弥「次号の安東さんの翻訳 兄が楽しみにしてますから。」

梶原「安東君?」

はな「はい。 あ… ご期待に沿えるように 頑張ります。」

病院

廊下

英治「こんにちは。」

看護婦「こんにちは。 今日は 奥様 気分がすぐれないから 帰ってほしいと。」

英治「あ… 大丈夫なんですか?」

看護婦「心配なさるほどでは ないですけどね。」

英治「そうですか…。 では 申し訳ありませんが これ 着替えなので 渡して頂けますか。」

看護婦「はい。」

英治「よろしくお願いします。」

病室

看護婦「本当によかったんですか? ご主人 随分 心配なさってましたよ。」

香澄「いいんです。 ありがとうございました。」

看護婦「お着換え しまっておきますね。 毎日のように お見舞いにいらして 優しいご主人ですね。」

香澄「ええ。 優しいんです。 …優しすぎるの。」

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