夜
おじぃ 今更だけどさ ホテルを経営するって 大変なんだね
マリヤ「もしもし 狩野ですけど」
純「もしもし マリヤさん 純だけど」
マリヤ「純ちゃん ヤバいよ かなり ウチ 激ヤバ」
純「え? ちょっと どうしたの?」
マリヤ「お義父さん やけ酒ばっかり 呑んでるの この前の台風で ホテル メチャメチャになってから 修理にいっぱい お金かかるし 予約のお客さん キャンセルするから 借金返すあて なくなっちゃって」
純「え あ ちょっとさ お父ちゃんに代わってくれる?」
マリヤ「お義父さん 純ちゃんから お電話」
善行「あいつと話すことなんかない!」
マリヤ「ちょっと 大きい声ださないで! この子がビックリするでしょ!」
善行「はい はい はい すみません」
善行「もしもし 俺や」
純「もしもし お父ちゃん あのさ 色々大変だと思うけど 頑張って ウチのホテル立て直してね」
善行「どないしたんや? 気色悪いな」
純「いや 私 最近さ 社長の秘書みたいなこと やりだしてさ ホテルって 経営するのって 大変なんだな ってのが分かったからさ」
善行「今頃分かったんか アホたれ まあ お前から 励まされるほど 落ちぶれてはいないわ それには 今度のことは俺が悪いんやない そやな 考えてみれば 12年前 ここに来たんが そもそもの間違いや」
は? 何言っちゃってんの この人?
善行「いや せやないな そもそもの間違いはな お前のな 母親とな 一緒になったことや ウソやウソ こないだな あいつにな 好きな四文字熟語 言うてみ って俺が聞いたらな あいつ なんと 答えたと思う? 好きな四文字熟語 信号無視や 信号無視」
純「もうさ くだらないこと 言ってないでさ もういいや お母ちゃんに代わって」
善行「今 あいつ 家に居てへん 警察や」
純「え? え? どういうこと?」
善行「スピード違反で捕まってんねん 30キロの それで 信号無視が二つ」
純「ウソ!」
善行「正はな ホテルの修理しようとして階段から落ちて 入院してんねん」
純「ウソ!」
善行「剛のヤツは 情けない 神戸でストーカーみたいなことしてな 警察に捕まりそうになってんねん どいつもこいつも」
純「なにそれ?」
純「ほら お父ちゃん こんだけ悪い事重なったんだしさ 大丈夫だよ もうほら 次はきっと 良い事 起こるよ ね? あの そういうの四文字熟語でなんて言うんだっけ? えーとね ちょっと待って えーと なんだっけな…『いちようくうふく』 うん」
善行「なにを言うてんねん それを言うなら『一陽来復(いちようらいふく)』や 心配せんでもええ もうな 既に俺の頭ん中には 乾坤一擲 起死回生の一手がな 準備してあんねん まあ 見とれや」
純「ちょっと お父ちゃん また 変なこと考えてんじゃないでしょうね? ちょっと やめてよ お父ちゃん もしもし?」
ったく ホテルの経営者ってヤツは どいつもこいつも