連続テレビ小説「カーネーション」第110回「あなたを守りたい」【第20週】

北村「はあ…。 せやけど まあ ちょうどよかったわ。 これでよ 何ぞ 買うちゃってくれ。」

糸子「何や?」

北村「まあまあ まあまあ。」

糸子「何や これ?」

北村「生地代や。」

糸子「生地代?」

北村「ほうよ! ほんまは 今日 来たんは それ 返しに来ちゃあったんや。」

糸子「ひょっとして あれけ? 去年 失敗した既製服の生地代け?」

北村「あれがよ 皆 売れたんや。」

糸子「売れた? どこに? 」

北村「わいが 本気 出したら こんなもん ちゅうこっちゃの」

糸子「どこに売れてん?!」

北村「それは 言われへんわい。」

糸子「は?」

北村「言うたら お前 また 横入りするやろが!」

糸子「するか!」

北村「もう いらん事 気にせんでええねん。 これで わいの損も埋まったよって めでたし めでたしや。 乾杯や! チ~ン。 いっぱい食えよ。 ほら もう むちゃくちゃ食えるど。 こんだけ あったらよ。 直しとけよ。」

小原家

オハラ洋装店

「こんにちは。」

優子「あ… いらっしゃい。」

「こないだは 娘が お世話かけましたなあ。」

優子「ああ~。」

「おかげさんで 娘 あの服 よう似合うてましたわ。 ほなさかい 今度は うちが 注文さしてもらおう 思いまして。」

優子「そうですか。 あ どうも。」

糸子「まあ こないだは ほんま すんませんでした。」

「いいえ。」

糸子「娘さん あれから どないです?」

「ええ おかげさんで つわりも だいぶ 楽なってえ。」

糸子「まあ~ そら よかった! まあ どうぞ どうぞ。 昌ちゃん! 昌ちゃん!」

昌子「はい。」

糸子「こないだの おなかの大きいお客さんの…。」

昌子「ああ~! あれから どないですか?」

糸子「ちょっと。」

昌子「それはそれは よかったです~。」

「お世話かけまして。」

昌子「いえいえ ま どうぞどうぞ。」

井戸

糸子「もう あんた 店なんか 出んでええ。 お客に あんな しみったれた 顔しか 見せられへんやったら 店なんか 出な。 商売の邪魔や。」

小原家

居間

司会者『冬蔵を襲名するにあたり 感慨も ひとしおかと思いますが 今のお気持ちは…』。

優子「恵さん?」

冬蔵『春太郎から冬蔵へ…』。

優子「何 さぼってんの?」

松田「さぼってへん。 先生が『ええ』言うてくれたんや。」

司会者『うまい事 おっしゃいますね』。

冬蔵『まあ 私 歌舞伎の時は 生真面目なんですが どうも こういうお話の時は』。

優子「あ 春太郎や。」

松田「もう 春太郎 ちゃうよ。」

優子「ん?」

松田「こないだ 中村冬蔵を襲名しはったんや。」

優子「へえ~。 うちな 小さい頃 よう おじいちゃんに 歌舞伎 見してもうたわ。 そのあとで お母ちゃんが 何や 怒ってはった。 何や知らん『春太郎が嫌いや』ちゅうてな。」

松田「シッ!」

司会者『ところで 多くの方が 冬蔵さんを 生っ粋の浪速っ子だと 思っていますよね』。

冬蔵『ええ。 ところが 私 岡山の出身なんでございますよ』。

司会者『あ そうですか』。

冬蔵『しかし 若い時は どうにか ご婦人にモテようと 浪速っ子のまねをしたり したもんでしてね』。

松田「ホホホホホホ…。」

優子「恵さん こんなん なってるわ。 アハハハハ 春太郎も 面白い。」

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