小原家
オハラ洋装店
糸子「こんにちは。」
居間
糸子「よっこらせ。 ちょっと 見ちゃあってくれるか? あの子な また こんなんしてんや。」
松田「うん? ちょっと… うん。 ああ? こりゃ… ハハハハ…。 あ~あ もう ここ こんなんして…。 あら ここも こんなんして もう… あんなけ言うたのに もう~。 先生も 直ちゃんには ええかげん 厳しい言わんと あきませんよ。 中途半端に助けるよって いつまでも甘えるんです。」
糸子「いや 言うて直る事やったら 言うけどな あら 直らんよって もう。」
松田「ちょっと…。 せやけど これは あんまりやで これ もう~。」
オハラ洋装店
「小原さ~ん 小包です~。」
<月末になったら 優子と直子から 店の売れ残りが届きます オートクチュールの優子の店からは 生地束。 プレタの直子の店からは 商品>
居間
糸子「う~ん… 6,000円。」
聡子「へ? けど これ 1万8,000円て 買いてあるで。」
糸子「売れるか これが 1万8,000円なんか。 岸和田のお客っちゅうんはな 東京みたいに 甘い事ないで。」
聡子「けど 直子姉ちゃん 怒らへんやろか?」
糸子「いや ほんでも これ 6,000円でも売れるやろか? 東京には 東京の厳しさが あるか知らんけどな 岸和田には 岸和田の厳しさが あるよってな。」
オハラ洋装店
2人「こんにちは。」
聡子「いらっしゃい!」
「また新しいの 入った?」
<姉ちゃんらの商品を売るんは 聡子の仕事。 これが 若いお客さんらには えらい人気でした。>
「これ 似合いそうやわ。 どやろ?」
「ひゃ~ これ 格好ええ!」
聡子「やろ?」
「なんぼ?」
「1万円?!」
「1万円? 安う!」
「なあ 安いなあ。」
聡子「やろ?」
「え~ うちも欲しい。 聡ちゃん もう一個 同じの ない?」
聡子「同じのは ないんやけど これ どやろ?」
「え~ こっちも ええなあ。」
「格好ええやん。」
聡子「ピンクやねん。 ほな ここもな ピンクやねん。」
「あ ほんまや。」
「これ ええ!」
「なあ 格好ええなあ これ。」
「これは なんぼ?」
聡子「これも 1万円。」
「安い!」
<この商売 いつまでたっても 難しいもんです>