客「ほかすんやったら 売ってえな。」
善作「えっ?」
客「何ぼ? ええがな これ~。 ちょうど こんなん 探しちゃったんじょ。 そやけど なかなか 売ってへんしなあ。 何ぼ?」
善作「いや… 50銭もろときまひょか。」
客「50銭! やっすいなあ! もらう もらう!」
<そんなこんなで その夏 うちは アッパッパを 2日に1着の割合で こしらえるはめに なりました。 それが 洋服作りを許す代わりに お父ちゃんが出してきた条件です>
玄関前
(善作の鼻歌)
木岡「おう! 善ちゃん!」
善作「おう! ハハハッ。」
木之元「あれ 善ちゃん! えらい 何や 変わったもん 着てらし。」
善作「ヘヘヘッ。」
木岡「お前 知らんのんけ! これは アッパッパや。」
木之元「アッパッパ?」
善作「知らなんか? これな 今 うちで ごっつ売れてんねん。 涼し 動きやすい。 こら 言う事ないで おい! ハハハハッ。 ほれ!」
木之元「よう似合うてるやん!」
枡谷パッチ店
仕事場
(ミシンの音)
糸子「あ~ もう 今日 盆踊り あんのになあ。 あ~。」
枡谷「小原。」
糸子「あれ お疲れさんです。」
(ため息)
糸子「どないしたんですか?」
枡谷「あんなあ…。 ほんま すまんけど… 店 辞めへてくれへんか?」