小原呉服店
勘助「こんばんは~!」
玉枝「こんばんは~!」
ハル「はれ えらい早いやないか?」
玉枝「あ~ もう 勘助が その別嬪の先生 はよ見たいて 騒ぐよって。 ハハハ。」
勘助「先生は? 先生 どこ?」
ハル「2階や。 ちょっと早いけど もう 始めるか?」
玉枝「うん。」
ハル「勘助 上 行ってな 先生と糸子 呼んできて。『最後の夜やしな 今日は 早めに終わって お別れ会しまひょ』ちゅうて。」
勘助「へい へい! ほな… これ 熱いで。」
玉枝「へえ へえ。」
ハル「それ 何?」
玉枝「これな カレー作ってんやし!」
座敷
勘助「失礼します~! 御飯やで~!」
根岸「駄目! もう 全然 駄目! もう どうするの?! こんなんじゃ 今日でなんて 終われないわよ!」
糸子「すんません。」
根岸「はい やり直し! 何回 同じ事やってるの?!」
糸子「すんません。」
居間
<それでも お別れ会は 30分 遅れただけで ちゃんと始められました>
木之元「ほんで その次に あの~ ビリヤード屋 やりましてん。」
根岸「ビリヤード屋?」
善作「これがまた びっくりするぐらい 客が来んかったんやな。」
根岸「まあ 大変!」
木之元「いや 先生 笑い事ちゃいますんやで。 ほんま いっときは わしも どないしょうか思うぐらい 貧乏で。 もう 嫁もいてへんで。 ハハハ!」
善作「まあまあ この辺の男は そんなのばっかりですわ。 ああ こいつもね 工場 クビになって 今 お菓子屋で働いてますねん。」
根岸「まあ お菓子屋さん!」
勘助「はい。 その… 俺は もう 根性のない あかんたれで。」
<先生を囲んで 最後の夜は ほんまに楽しい楽しい夜でした>
道中
根岸「頑張りなさい。」
糸子「はい。」
根岸「さようなら。」
糸子「さいなら! さいなら! 根岸先生 ありがとうございました。」
小原家
玄関
糸子「ただいま…。」
<根岸先生が おらん家は 灯ぃが消えたみたいで… 売れへん反物と… 季節外れた アッパッパ>
糸子「お父ちゃん…。」
善作「何や?」
糸子「もう アッパッパ しもた方が ええんちゃう?」
善作「やかましい。 買う人が おるかもしれんのじゃ。」
<機嫌の悪い お父ちゃん いつもの事やのに 何でか ますます この家は あかんようなってもうた 気ぃがしました>