糸子「はあ~!」
善作「出来たんか?」
糸子「あ… うん 出来ました。」
(せきばらい)
善作「見してみい!」
糸子「へい…。」
<まあ これで この勝負 おあいこっちゅう事で>
善作「お前… 細いのと ちゃうか?」
糸子「えっ? えっ?! えっ そんな事… えっ?」
善作「あっ 足 出んやないか!」
糸子「あっ 嫌! どないしよ? どないしよ?!」
ハル「どど… どないしたん? なあ どないしたん?」
善作「『どないしよ?』や あるかい お前。 おい お前 作り直すしかないやろ!」
糸子「嫌… あ~!」
善作「ばあさん。 千代と子供ら 起こしてくれ! すぐや! すぐ!」
糸子「あ~ どないしよ? ああ…。」
ハル「千代 千代! なあ 静子! ちょっと 起きて!」
善作「おい 千代!」
<結局 飛び起きてきた お母ちゃんと 妹らと お父ちゃん おばあちゃん みんなが手分けして 細すぎるとろこを ほどいてくれて それを うちが縫い直して どないか こないか…>
客「おおきに! よう 間に合わせてくれたなあ!」
糸子「はあ よかったです。」
客「お宅 ほんま 若いのに なんちゅう ええ職人や。 さぞかし この店 これから 繁盛するで!」
糸子「いやいや まだまだ半人前です。」
<勝負 うちのボロ負けですねん>
客「ほんなら これ お代 確かめてよ。」
糸子「おおきに! ほな 失礼します。 はあ?」
客「えっ?」
糸子「これ 何かの間違いちゃいますか?」
客「約束した分やで。」
糸子「約束? どんな約束しましたけ?」
客「せやから 代金は 倍払うて。」
糸子「倍?!」
客「うん… あれ? あっ! ひょっとして わい 昨日 えらい 慌てちゃったよって 初めに言うん 忘れちゃったかもしれんなあ。」
糸子「はあ… いや うちも 代金の事なんか 今の今まで 頭から 飛んでもうてましたわ。」
客「いや ほんまか! アハハハハッ いや~ でも こっちは 初めから そのつもりで 頼んじゃったさかい その金額で。」
糸子「おおきに! こない ようさん おおきに! おおきに!」
居間
糸子「イテッ!」
善作「アホか!」
糸子「何で?」
善作「代金も聞かんと 仕事 受けるて どうゆうこっちゃ?! まだまだ 甘っちょろい。 半人前の商売人やのう! ふん。」
お菓子屋
4人「こんにちは~!」
勘助「いらっしゃい!」
糸子「やっぱし 桜餅やな!」
静子「う~ん… うちも 桜餅にしよ!」
清子「うち みたらし!」
光子「あ~ うち どないしよ?」
勘助「どないしてん? 珍しいやんけ 4人そろて。」
糸子「ふふ~ん! お父ちゃんが お駄賃くれたよって。」
勘助「お駄賃?」
糸子「うん。」