書斎
志津「ただいま。」
「お帰りなさい。」
奈津「ちょっと お母ちゃん 遅いわ。 また どこで道草 食うちゃったん。 今日は お客さん 5時には 来るんやで?」
志津「堪忍 堪忍。 ついでに 安岡さんとこで 髪 結うてもろちゃってん。 どない?」
奈津「何も変わってへんやん。」
志津「ほんで 何や こんなん くれたで。」
奈津「何 これ?」
志津「小原さんとこの嬢ちゃん 洋服 作んやて。」
克一「はあ? 今度は また あっこ 洋裁屋 始めよったんかいな。」
奈津「うちは 嫌やわ! 岸和田で 洋服 作んのなんか。 作るんやったら やっぱし 心斎橋の もっとええ店で作るわ。」
志津「けど 心斎橋より 安するんちゃうか?」
奈津「なんぼ安ても うちは 嫌!」
克一「奈津の同級生がな 洋裁屋 始めよったんやて。」
駒子「洋裁? どこで?」
「岸和田の店ですか?」
克一「小原呉服店 商店街にあるやろ。」
駒子「小原呉服店?」
「知らんなあ。」
志津「駒ちゃん。 髪結い屋の安岡さん 分かるやろ?」
駒子「ちょうど うち 明日 髪 結うてもらいに行きます。」
志津「あっこの若奥さんが くれたよって 詳しい事 聞いてみい。」
駒子「はあ そうします!」
小原家
小原呉服店
八重子「こんにちは~。」
糸子「あ 八重子さん。 いらっしゃい。」
八重子「糸ちゃん お客さん。」
糸子「あ いらっしゃい。 ああ すんません。 今 お父ちゃん ちょうど 集金に 出てて…。」
八重子「糸ちゃん ちゃうちゃう。 糸ちゃんの お客さんや。」
糸子「え? は…? ひょっとして 洋裁の…? はあ どうも! 初めまして! うちが 洋裁屋の小原糸子です!」
駒子「どうも…。」
糸子「エヘヘッ ああ 昨日 チラシ 置いたとこやさかい そない急に お客さん 来ると 思てへんかったさかいに。 あ どうぞ どうぞ! ええ!」
駒子「あのう…。」
糸子「え?」
駒子「ほな うちが 初めての客なんですか?」
糸子「あっ いえ 心配せんとって下さい。 腕は確かですよって。」
座敷
糸子「どれか ええなあ ゆうの ありますか?」
駒子「まあ… これ? あと これとか。」
糸子「これ… なるほど。」
駒子「そんなもんやな。」
糸子「ふ~ん…。」
<お客さんは パリッとした 格好ええ感じの服が 好きなようでした。 けど… 本人は 丸顔で 背ぇも そない大きない>
糸子「う~ん けど お宅やったら もっと こう ふわっとした感じのが 似合うんと ちゃいますか?」
駒子「え?」
糸子「襟も丸こうて… 生地も柔らこうて…。 ああ… これとか。」
駒子「はあ そんなは うちは 似合わへん。」
糸子「そうかなあ?」
駒子「絶対 似合わへん!」
糸子「けど お宅 どっちか言うたら 顔も おぼこい… いや かいらしよって こんなんより…。」