駒子「いや 分かってんねん。 うち 去年 作ったよって そんなん。」
糸子「え?」
駒子「せっかく 小遣い ためて 心斎橋まで行って 作ってもうたんに 何や 着てみたら ごっつい変やねん。」
糸子「どう?」
駒子「え?」
糸子「どう変やったん?」
駒子「う~ん 何や… 不細工に見えた。 顔色が悪て… 脚も短 見えた。」
糸子「そら 店が下手やったんや。」
駒子「下手?」
糸子「うん。 生地の選び方が 間違うてるから 顔色が 悪う見えんねん。 スカートの丈が 脚に合うてへんから 短 見えんねん。」
駒子「何かな 服は かいらしいのに うちは 不細工に見えんねん。 そやから うちみたいな不細工は こんな かいらしいの 着たら あかんて 言われてる気ぃして…。」
糸子「うちやったら もっと 似合うように作っちゃる。」
駒子「ほんま?!」
糸子「絶対 お宅 こうゆう かいらしいのが 似合うと思うで!」
駒子「そうかのう?」
糸子「うん!」
駒子「そやったら うれしいなあ! うち… ほんまは こうゆう かいらしいのが 好きやねん!」
糸子「そやろ?」
駒子「うん。」
<お客さんが ごっつい うれしそうに笑てくれたよって ほんまに 必ず 必ず 似合うように 作っちゃろと思いました>
小原呉服店
駒子「こんにちは。」
善作「あ~あ こんにちは。」
糸子「お父ちゃん。 お客さんや 洋裁の。」
善作「ああ こらまた どうも! ハハハ…。 何や珍しい 友達 連れてきたんかな 思うた。 お客さん。 おお~。」
駒子「ほな 楽しみにしてるよって。」
糸子「任しといて。」
糸子「気ぃ付けて。 お父ちゃん!」
善作「何や?」
糸子「生地代 貸して!」
善作「わしに 金は ない!」
糸子「嘘や! パッチ代 まだ残ってるやろ!」
善作「ないちゅうたら ない!」
糸子「あっ! う~ん。 な~ 頼むわ! 必ず返すさかい! うち チラシ 作ってしもたさかい ほんま 全然 ないねん! なっ お願い!」
善作「う~ん…。 なんぼやねん?」
糸子「2円… あ やっぱし 2円50銭!」
生地屋
店主「あとは これやな。」
糸子「う~ん…。」
店主「全部 同じように見えるけど ちょっとずつ ちゃうよってな。」
糸子「やっぱし じかに当ててみんと 分からへんなあ…。」
店主「そらそや。」
糸子「ちょっとずつ買うて 試す… 訳にもいかへんしな。 お客さん ここに 連れてこようかな…。」
店主「まあ それだけ あれなんやったら…。」
糸子「え?」
店主「見本 貸したろか?」
糸子「見本?」
店主「必ず返してや そんかわり。」
糸子「ああ… うん おおきに! 返す。 すぐ返すわ!」