昌子「先生 ほな うち 奥 見てますよって お客さん 来たら 呼んで下さい。」
糸子「うん。」
りん「先生 何か 直ちゃんが…。」
昌子「あとにしい!」
りん「へ? 先生 暇そうやのに?」
昌子「アホ! あれは 暇なんと ちゃう。 邪魔しな!」
八重子「あの…。 今日は おおきに。」
糸子「こっちこそ… おおきに。」
八重子「泰蔵さんが…。 あさって 出征する事になりました。 せやから 見送っちゃるためのモンペを ここで 糸ちゃんに教わって 作りたかってん。」
糸子「そうでしたか…。」
八重子「厚かましいかも しれへんけど。 一緒に 見送っちゃって もらえませんでしょうか? お母さんも 勘助ちゃんも 多分 よう見送らんと思うねん。 泰蔵さん つらいと思うんやし。」
八重子「今どき 見送りは そない 派手にしたら あかんやろけど せめて 戦地で思い出した時に ちょっとは 明るい気持ちになれるような ええ思い出 作っちゃりたいなあと思て…。 糸ちゃん 一緒に 見送っちゃって もらわれへんやろか?」
糸子「ええの?」
八重子「うちが 頼んでるんや!」
糸子「勘助に あんな ひどい事 してしもたのに? 八重子さんに あんな ひどい事 言うてしもたのに? うちが 泰蔵にいちゃん 見送っても ええの?!」
八重子「糸ちゃん… ごめんな。」
糸子「何で 八重子さんが謝るん?『ごめんな』は うちや。 ごめんな 八重子さん。 ごめんな!」
八重子「分かった 糸ちゃん! 分かった おおきに! おおきにな…。 糸ちゃん。 あさって 来てな。 きっと 来てな! よろしく お願いします!」