2階 座敷
(直子と聡子の泣き声)
<起きといてほしい人らは なかなか起きてくれんと>
寝室
(泣き声)
<寝といてほしい人らは なかなか寝てくれへん>
(泣き声)
オハラ洋装店
(からすの鳴き声)
<看病 子供 家事 商売。 どれもこれも この先 どないしたもんか>
八重子「こんにちは!」
太郎「こんにちは!」
糸子「あ いらっしゃい!」
八重子「この間は おおきになあ。」
糸子「いいえ。」
八重子「そこまで買い物 来たさかい ついでに 懐かしいもん 見せよう思て。」
糸子「え?」
八重子「こないだ 押入れ 整理してたら 出てきたんやし。」
糸子「あ~ 覚えてる! 百貨店の制服 作った時に。」
八重子「そうそう!」
糸子「あ~! へえ~! いや~ せや! これこれこれ!」
八重子「これこれ 勘助ちゃんが 何か これが ええちゅうてなあ。」
糸子「せやせや! けど 結局 不採用やったけどな。 懐かしいなあ!」
八重子「懐かしなあ!」
<人が こんな洋服を着れてた頃が 確かにあったのに 今では もう どっか よその国の話のようでした>
糸子「何がよかったんやろな 勘助。」
八重子「何でやろな。」
糸子「ほんまや! いや これこれ! いや~!」
(笑い声)