2階 仕事場
千代「まあ こないだは ほんまに お世話になりました。」
周防「うんにゃ そんくらいは。」
千代「何かあったら 何でも言うて下さいな。 下に おりますさかい。
周防「ありがとうございます。」
千代「いいえ。」
糸子「あの~ 一とおり 使えるように そろえたつもりやけど ちょっと見といて下さい。 お客さん 4時に来ますよって。」
周防「分かりました。」
糸子「ほな よろしゅう。」
周防「あの~。」
糸子「はい。」
周防「あん 水玉ん服は 小原さんが 考えたとですか?」
糸子「は?」
周防「下のウインドーに 飾っとっと。」
糸子「はい そうです。」
周防「ふ~ん…。」
糸子「それが 何か?」
周防「あ いや…。」
夕方
周防「手ば 上げてくれんですか。」
「おっ。」
玄関前
(小鳥の鳴き声)
優子 直子「行ってきます!」
糸子「こらこら 待ち! あんたら これ 忘れたら あかんやろ。 はい。 あ おはようございます。」
周防「おはようございます。」
糸子「早いですね。 ほれ あんたらも『おはようさん』言わんけ!」
2人「おはようさん。」
周防「おはよう。 おはようございます。」
2人「行ってきます!」
糸子「行っちょいで~。」
2階 仕事場
糸子「失礼します。」
周防「はあ。」
糸子「お茶です。 休憩して下さい。」
周防「ああ ありがとうございます。」
糸子「あの~ ちょっと聞いて ええですか?」
周防「はい。」
糸子「靴…。」
周防「靴?」
糸子「はい。 周防さんの靴 ああゆうんは 長崎には よう売ってるんですか?」
周防「ああ あれは 舶来品の店で 買うたとです。 珍しか革の色ばってん おいは よかね~って 思うたとです。」
糸子「長崎は 異人さんが多いんですか?」
周防「昔から 長崎港は ヨーロッパとの貿易が あったですけんね。 あん靴は ピカが 落ちっちゃけた時も 嫁さんが 持って逃げてくれたけん 燃やさずに済んだとですよ。 他は 何でんかんでん 燃えしもうた…。 たった一つの財産やけん 大事に 手入れ しよっとですけど…。」