周防「フフッ… アハハハハハ…! 今の おいの話 分かったですか?」
糸子「はあ…。 はあ 多分…。」
周防「ハハハハハハ!」
糸子「はあ すんません。」
周防「いやいや おいん方こそ。」
糸子「言葉ちゅうんは 便利なようで やっかいなもんですね。」
周防「ばってん 諦むっ事も なかですよ。」
糸子「へ?」
周防「おいは こんごろ 酒の席とかには 必ず 三味線ば 持っていくごと しとっとです。 そしたら 言葉が通じんでも 結構 みんなと一緒に 楽しむっとですよ。」
糸子「はあ~ ほんで こないだ 三味線 弾いてたんですね。 フフッ。」
周防「服も… 服も そうたい。」
糸子「服?」
周防「服も やっぱい 言葉がなかったっちゃ いろんな事が 分かるけん。」
糸子「はい…。」
周防「おい… 昨日…。」
糸子「はい。」
周防「こん商店街 来て 思わず 見とれた 女の人が おったとですよ。」
糸子「はあ…。」
周防「あん戦争が終わって… やっと1年 たったばってん 正直 おいなんか まだ いっちょん 立ち直っとらんとです。 悲しかとと… 悔しかとと…。 不安ばっかいの その日暮らしです。」
周防「ばってん…。 そいばってん もう こがん服ば 着て 歩ける女 おっとね! ああ… すごかあ! おいは… あん服ば 格好よかて 思うたと。」
周防「格好よかし… きれか。」