(戸の開く音)
糸子「奈津?! あんた…。 何してんや? あんた 一体 何してんや? 借金残して 夜逃げして 何やってんや? 何や この格好! 言うてみい! 言うてみい!」
周防「小原さん!」
糸子「ああ~!」
奈津「関係ないやろ あんたに。 あんたになんか 何も関係ない! 関係ない! 関係ない! 関係ない! 二度と来んな! あんたなんか あんたなんか 何も関係ないんや!」
小原家
オハラ洋装店
周防「おはようございま~す!」
昌子「おはようございます。」
糸子「昨日は すんませんでした。」
2階 仕事場
(せみの鳴き声)
<結局 ボタンは 家に手持ちのもんが あったそうで。 周防さんは 何事もなかったように 仕事を続けてくれました>
(せみの鳴き声)
オハラ洋装店
サエ「こんにちは!」
昌子「サエさん! あ~ いらっしゃい! 先生! サエさんですよ~!」
サエ「チラチラ 見てるわ~とは 思てたんやし。 ほしたら 信号 変わった途端に にゅ~って こっち 近づいてきて『僕 お宅の出てる映画 見た事あります』やて。 もう 誰と勘違いしてんかしらん! 嫌やわ~! なあ 糸ちゃん聞いてよ!」
糸子「うち 忙しいんやて。」
周防「あの~ ちょっと 手洗いば お借りしますけん。」
サエ「ちょっと! ちょっと あれ 誰?」
糸子「職人さんや。」
サエ「職人さん? 職人さんて?」
糸子「うるさい! 黙っとって。」
(せみの鳴き声)
<周防さん お宅が思てくれたとおりです。 うちは 夢を作りたかったんです。 戦争で受けた傷を忘れて 新しく生まれ変わる。 そうゆう夢です>
玄関前
昌子「はあ また。」
「格好ええ!」
<服に託した うちの夢は 女の人らに届いたと思てます ほんでも 服は服です。 知れてます ほんまに どん底におる人を 助けたいと思たら 服とちゃう。 この 自分の手ぇしかないんや>