八重子「え… あれ?」
糸子「うん?」
八重子「あら おチビさんらは?」
糸子「ふふ~ん!」
八重子「うん?」
糸子「ピアノや。」
八重子「ピアノ?」
糸子「うん。 今日は ピアノ 明日は習字 水曜は絵。 あと 長唄と お花と ダンスと日本舞踊。 習えるもんは 片っ端から 習わせる事に しちゃったんやし。」
八重子「はあ!」
糸子「あの子らには ためになる。 うちは 仕事に集中できる。 お客さんには 迷惑かけへん。『一石二鳥』。いや 三鳥やろ?」
八重子「なるほどな!」
<なんちゅうて のんきに笑てた うちが… 甘かった>
オハラ洋装店
優子「ただいま! お母ちゃん ピアノ 買うて!」
直子 聡子「ピアノ 買うて!」
3人「ピアノ ピアノ! ピアノ 欲しい! ピアノ 買うて ピアノ 買うて!」
優子「お母ちゃん ピアノ 買うて!」
直子 聡子「ピアノ 買うて!」
昌子「すんません。」
台所
糸子「何や?」
優子「楽器屋さんに ピアノ 売ってたんや。 うちら3人とも ごっつ欲しい! ほんまの ほんまに 欲しいんや! なあ お母ちゃん ピアノ 買うて。」
直子 聡子「ピアノ 買うて!」
糸子「ピアノ? アホか! そんなもん帰るかいな。」
3人「ピアノ 欲しい! ピアノ 買うて! ピアノ 欲しい!」
糸子「あかん!」
3人「ピアノ 買うて!」
糸子「あかん!」
3人「ピアノ 欲しい!」
糸子「うるさ~い! 買われへんちゅうてんねん!」
優子「けど… うちら ピアノ 欲しい。」
直子「ピアノ 欲しい! ピアノ 買うて!」
3人「ピアノ 欲しい! ピアノ 買うて! ピアノ 欲しい! ピアノ 買うて! ピアノ 欲しい! ピアノ 買うて!」
糸子「お母ちゃん もう どないしよう?」
千代「うちは 知らん!」
糸子「え~ お母ちゃん。 なあ 待って。」
3人「ピアノ 欲しい! ピアノ 買うて!」
糸子「お母ちゃん!」
<さあ このごんたが 3人 固まった時の恐ろしい事>
3人「ピアノ 欲しい! ピアノ 買うて!」
糸子「あ~!」
夜
(犬のほえる声)
(物音)
<何か やってる。 あ~ 見たいない 見たいない!>
(物音)
優子「ピッカピカやしなあ ピアノ。」
直子「ごっつい きれいな音 出るし!」
聡子「黒い! 白いとこもある!」
<はあ~… あんたらに ピアノなんか やらせた お母ちゃんが悪かった>
優子「絶対 買うてもらおな ピアノ。」
2人「うん!」
<悪かったから 堪忍してえ!>