連続テレビ小説「カーネーション」第89回「揺れる心」【第16週】

糸子「はあ どうぞ。」

北村「単刀直入に言うぞ。 あんたが流行らせた服 あるやろ?」

糸子「はあ?」

北村「水玉のやつや!」

糸子「ああ~。」

北村「あれ 作ってくれ。

(大きな ため息)

糸子「お宅 婦人服 なめてますんか?」

北村「はあ?!」

糸子「あんなあ あの水玉で ええんやったら なんぼでも教えますわ。 けど よ~う考えて下さい。 ほんまに あれで ええんか。」

北村「あ… あかんのけ?」

(舌打ち)

(ため息)

北村「おい! えっ…。」

糸子「一から 勉強してもらいましょか。」

糸子「ほんで この流れが 戦争に入ったら こうなる。 紳士もんに 近づくんです。 肩パットが入って 全体的に しっかりしてくる。 この戦争前の 女らしい 柔らかい感じと 全然 変わってますやろ? そっからあとの何年かは 知ってのとおり 戦争で 洋服どころやない。 モンペばっかしです。 戦争が やっと終わって 最初に出てきたんが これ。」

北村「パンパンや。」

糸子「そうです。 この子らが 一番最初に おしゃれを始めたんです。 それが ごっつい格好よかった。 最初は 女の人らも 白い目で見てたんが どんどん まねるようになりました。 ほんで その ちょっとあとに うちが作ったんが… これっちゅう事です! 昭和21年の春から夏に 確かに ごっつい流行りました。 けど もう それも 2年も前の話です。」

北村「いや せやけど 2年前ぐらい… あかんのけ?」

糸子「残念ながら もう 犬でも食いません。」

北村「ほうけ…。」

糸子「よろしいか 北村さん。 婦人服にはな 流行っちゅう 厳しい厳しい 自然のおきて ちゅうもんが ありますんや。 お宅も 婦人服 始めるんやったら その おきての前に 土下座するつもりで やらんと あきませんで!」

北村「わ… 分かった! 分かった! 近い!」

糸子「はあ?」

北村「分かった。 わいも もう余計な事 言えへん。 あと あんじょう やってくれ。」

糸子「はあ?」

北村「あと あんじょう やってって。」

糸子「いや 肝心の話 こっからです!」

北村「わい 肝心の話 あかん。 あ~ あいつ あいつ…。 肝心の話 ものごっつう 好きやから。」

糸子「いやいやいや。」

北村「頼んだで!」

糸子「いや ちょっと待って下さい。」

北村「もうええ 頼んだ!」

糸子「いや ちょっと待って下さい。」

北村「もう ええって!」

糸子「待ってよ! あ! え~っ…。」

周防「あの~。」

糸子「はい。」

周防「そいで こいからは どげんなっとですか?」

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