料理屋
三浦「あ~ おおきに。」
糸子「どうぞ 組合長。」
三浦「あ~! いや~ ほんでも いよいよやのう。 新しい時代やのう。」
北村「えっ?」
三浦「新しい時代が 始まるんや。 戦争で焼けてしもたもんなあ。 もう どんな思ても 二度とは 取り返せえへん…。 ほんでも… 新しいもんは まだ… まだ 手に入れる事ができるんや。 お前ら 切り開け! なんぼでも! ほんで また… 新しいもんを見せてくれ!」
(北村の泣き声)
糸子「え?」
三浦「おいおい! 何や おい! 大の男が お前…。 あ~ おい! 布巾ないか? 布巾 その辺に。 ちょっと… こっち くれ。」
(泣き声)
三浦「北村 ほれ これ使い。」
北村「はい…。」
♬~(ラジオ)
♬『口びる よせて だまってみている 青い空』
<北村さんの家に 何で 女がいてへんのか…>
♬~(三味線)
<周防さんは 長崎で どんな目に遭うたんか… 組合長は 何を焼かれてしもたんか…>
♬~(三味線)
<うちは な~んも知らんけど…>
♬~(三味線)
<ほんでも みんなと こないしてるうちに 何や お湯に つかったみたいに…>
♬『リンゴは なんにも』
<心の中から 解けていくもんがありました>
道中
<はあ… うちは 恋しいんやな うちは お父ちゃんが好きでした 勘助が かわいいて しゃあなあて 泰蔵にいちゃんに憧れてたし… 勝さんを 大事に思てました>
(男女の笑い声)
「あ~ オッケー オッケー!」
(笑い声)
<そういう人らを 全部 なくして… 開いた でっかい穴の所に えらい人が 入ってきてしもた>
回想
周防「おいは… あん服ば 格好よかて 思うたと。」
回想終了
糸子「かなんなあ…。」
<恋しいて 恋しいて…>
糸子「人のもんやのに…。」