安子「あっ 痛たた…。」
るい「動かんといてえ。 何 もう 情けない声出して。」
安子「そねえなこと言うても 痛えもんは痛えんじゃあ。」
ひなた「お父ちゃん。 おばあちゃん。 お父ちゃんと弟の桃太郎や。」
錠一郎「ああ… いや。 あの そのままで。 初めまして。 錠一郎といいます。」
安子「るいの旦那さん?」
錠一郎「あの… お義母さん。 るいを産んでくださって ありがとうございます。」
(すすり泣き)
ひなた「ああ もう 泣きやんだとこやのに。 泣かせるようなこと言わんとき。」
錠一郎「いや… いつか言いたいなと思てたんや。」
桃太郎「初めまして おばあちゃん。 桃太郎です。」
安子「初めまして。」
桃太郎「今は 雉真繊維の野球部にいます。」
安子「あ…。」
るい「勇叔父さんは?」
桃太郎「あっ 先 帰らはった。」
錠一郎「近いうちに ゆっくりって 言うてはりました。 健一さんも。 いっつも特別になるなあ…。 このステージのクリスマスライブは。 僕 ここで出会ったんです『On the sunny side of the Street』に。」
安子「昭和23年のクリスマスですか? 定一さんが『サニーサイド』を歌うた。」
錠一郎「そうです。」
安子「あの日 錠一郎さんも ここに…。」
<アニー・ヒラカワ 本名 安子・ローズウッドは その日 るい そして るいの築いた家族と夜遅くまで語り合いました。 安子と るいの間にあった 誤解も わだかまりも クリスマスの夜空にとけてゆきました>
朝丘神社
<年が明け『サムライ・ベースボール』が 大ヒットとなった頃 安子は再び 日本に戻ってきました>
勇「せえで どねんしとったんなら。 アメリカ行ってから。 何で あんころ屋のあんこが ハリウッドの アニー・ヒラカワになったんじゃ?」
安子「ボビーは… ボビーいうなあ ロバートのことじゃけど…。 アメリカに行くいうて決めた あの日から ずっと支えてくりょうった。 シアトルでの暮らしは 大変なことも もちろんあったけど ボビーのご家族は 異邦人の私を温こう受け入れてくれた。 本当に 木漏れ日みてえな人じゃった。」
勇「アニー・ヒラカワいう名前は?」
安子「名字は 平川先生にあやかって。 名前は…」
勇「あんこ?」
安子「アッハハッ そうじゃ。 あんこのアニーじゃ。」
(笑い声)