連続テレビ小説「カムカムエヴリバディ」第16話「1943-1945」【第4週】

雉真家

寝室

(産声)

「あ~ はい。 はい。 おめでとうございます。 よう頑張られましたねえ。」

「ホンマに。」

(泣き声)

美都里「生まれたん? あ~。 男の子? おなごの子?」

安子「おなごの子です。」

美都里「あ~ かうぇえらしいねえ。」

タミ「こちらです。」

勇「お~。」

千吉「あ~。」

勇「わあ~ 小せえのう!」

美都里「当たり前じゃろ 生まれたばあなんじゃから。」

千吉「あ~ おなごの子か。 次は男の子が欲しいのう。」

勇「父さん 今 そねんこと言わあでも よかろうが。」

千吉「おお すまん。」

安子「フフッ お義父様も抱いてやってください。」

千吉「えっ? お~。 いやいや 怖いのう。 よいしょ。」

勇「優しくじゃ。」

千吉「ごめん…。 あ… お~ かうぇえ子じゃあ。」

美都里「稔に よう似とる。」

千吉「うんうん。 名前ぉ決めにゃあおえんなあ。」

安子「あっ 名前は 稔さんが決めていかれました。」

千吉「そうなんか?」

勇「男か おなごかも分からんのに?」

安子「どちらでも通用する名前じゃそうです。 私も まだ知らんのんじゃけど…。 ここに。」

勇「義姉さんが開きゃあええが。」

千吉「わっ。 うん?」

安子「るい…。」

美都里「るい?」

千吉「るい? 何じゃ 珍奇な名前じゃのう。」

回想

(『On the Sunny Side of the Street』)

稔「『Louis Armstron g 「On the Sunny Side of the Street」』.

回想終了

安子「るい。」

千吉「ほっ ほっ あ~ お母さんじゃ ほら ほら ほら。」

勇「分かった。 野球の塁じゃ。」

千吉「えっ?」

勇「一塁 二塁 三塁 本塁の塁じゃ。 はあ~。」

千吉「何で そねえなもん 我が子の名前にするんなら。」

勇「ええ名前じゃが。 塁は 攻撃側にも守備側にも 一番大事なもんじゃ。 みんなで るいを守るんじゃ。」

美都里「ええじゃないですか。 稔が付けた名前じゃったらね。」

回想

稔「どこの国とも自由に行き来できる。 どこの国でも音楽でも自由に聴ける。 僕らの子供にゃあ そんな世界を生きてほしい。 ひなたの道を歩いてほしい。」

回想終了

<稔が るいと名付けた本当の思いを 安子だけは分かっていました。 しかし それは 決して口に出してはいけないことでした>

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