算太「すんません。」
杵太郎「算太。 これから活動写真は 店が休みん時にせえ。 なっ。」
算太「休みいうて 月に半日あるかねえかじゃ…。」
金太「口答よお すな。」
杵太郎「金太。 おめえも もっと ちゃんと算太を教育せえ。」
金太「親父が孫を甘やかしすぎるんじゃあ。」
杵太郎「そんなこたあ ありゃせん。」
金太「しとりゃせんことあ しとりゃせん。」
杵太郎「ありゃあせんこたあ ありゃあせんて…。」
金太「ありゃあせんこたあ ありゃあせんて…。」
黒鉄「大将! 金太さん!」
金太「あっ!?」
杵太郎「何や!?」
黒鉄「坊ちゃんが逃げました。」
杵太郎「うん? あ…。」
居間
♬~(ラジオ)
ひさ「算太の逃げ足の速えことにゃ 感心するわ。」
小しず「マラソン選手じゃったら 金メダルかもしれませんけど。」
ひさ「あほうなこと。 じゃあけど 銅メダルじゃったら?」
小しず「お義母さん そういうことじゃありません。」
2人「フフフフフッ。」
小しず「どうも あの子あ お菓子づくりに気ぃがいかんようで。」
ひさ「困ったもんじゃ。 いずれ 後を継ぐいうのに あ~ そんなら頂きましょうか。」
小しず「はい。」
安子「頂きま~す!」
小しず ひさ「頂きます。」
ひさ「う~ん!」
小しず「おいしいなあ。」
2人「うん。」
安子「私も作りてえなあ。」
小しず「うん?」
安子「泥のおだんごじゃのうて おじいちゃんとか お父さんみてえに 本物の 甘えお菓子ゅう作る人になりてえ!」
(笑い声)
ひさ「安子あ そねんこたあ せんでええんよ。」
安子「何で?」
ひさ「何でて おなごの子なんじゃから。」
お菓子司たちばな
安子「あっ いらっしゃいませ。」
きぬ「安子ちゃん。」
安子「あっ きぬちゃん。」
きぬ「あんころ餅5つちょうでえ。」
安子「は~い。 なあ きぬちゃんは将来 お豆腐作る人になるん?」
きぬ「豆腐屋のおかみさんに なるんじゃねえかなあ。 うちは おなごばあで 私ゃあ一番下じゃろ。」
安子「うん。」
きぬ「お父ちゃんも お母ちゃんも お姉ちゃんも 一番下の私に婿をもろうて 店ょを継がす魂胆らしいわ。」
安子「魂胆て…。」
きぬ「ええなあ 安子ちゃんは お兄ちゃんがおって。 好きな人のとけえ お嫁に行きゃあええんじゃから。」
安子「好きな人?」
勇「みんな入れ入れ わしのおごりじゃ!」
一同「わ~い!」
勇「おう あんこ。」
安子「安子じゃ!」
「わし あんころ!」
「草餅!」
「あっ わしも!」
勇「連勝記念じゃ。 隣の学校と試合して勝ったんじゃあ。 雉真選手 逆転のツーランホームラン!」