連続テレビ小説「カムカムエヴリバディ」第77話「1983」【第16週】

ひなた「(心の声)『よかった。 すみれさん 喜んでくれはった。』」

すみれ「轟さん。」

轟「はい。」

すみれ「休憩にして。」

轟「えっ?」

すみれ「気分悪い。」

轟「あ~ すみれさん 今 押してるんやわ…。」

すみれ「こんな気分で お芝居なんかできるわけないでしょ!」

榊原「謝り! 大月さん!」

ひなた「謝る?」

榊原「素人に所作の指導されたら 気分悪いに決まってるやろ!」

ひなた「あの! ごめんなさい。 いらんこと言いました。 ホンマにすいません。 見てて 気付いたもんですから…。 すみれさんは ええ作品つくろうと 一所懸命やってはんのやなあって。」

轟「おいおいおい! 誰や このあほ入れたん。」

ひなた「私は ただ その気持ちを応援したい思て…。」

五十嵐「出ていけ! お前のような ばかが いていい場所じゃない。」

ひなた「あんたが来いって言うたんでしょ!」

轟「何!?」

五十嵐「撮影の邪魔なんだよ。」

ひなた「何で?」

五十嵐「速く撮らなくちゃならないんだよ。」

ひなた「何で!?」

五十嵐「それがテレビ時代劇だからだよ。 いい作品つくるとか 一生懸命とか そんなこと誰も考えてない。 お前みたいな ばかを喜ばせることしか 考えてないんだよ。」

ひなた「はっ 何? 私みたいな ばかって。」

五十嵐「毎回毎回 同じような展開を 飽きもせず見てるやつのことだ。 同じセットで 同じ場所で 同じことが起きて 同じクライマックス迎えて。 大立ち回りで拍手喝采。 それを 速く 安く撮るから 会社は もうかる。 そういう からくりなんだよ。」

畑野「おい おい おい!」

ひなた「そうかもしれへん。 おんなじセットで おんなじ場所で おんなじことが起きて おんなじクライマックス。 おんなじ大立ち回り。 あんたの言うとおりかもしれへん。 それでも…。」

回想

すみれ『キヤ~! 誰か! 誰か!』。

『静かにしろ!』。

すみれ誰か…!』。

剣之介『暗闇でしか 見えぬものがある』。

ひなた「あっ 来た!」

剣之介『暗闇でしか 聴こえぬ歌がある』。

剣之介『黍之丞 見参』。

ひなた「黍之丞!」

すみれ『黍様!』。

回想終了

ひなた「それでも私は夢中やった。 黍之丞や おゆみちゃんの運命にハラハラしてた。 それが ばかって言うんやったら… 私は… ばかでよかった!」

五十嵐「お前…。 はあ…。 はあ ひきょうだぞ。」

ひなた「ひきょう?」

五十嵐「そんな特殊な回のことを 持ち出してくるなんて。 『黍之丞危機一髪 おゆみ命がけ』。」

回想

『放してほしけりゃ 刀を捨てろ!』。

すみれ『いけません 黍様! お逃げください 黍様。 これは わなでございます』。

剣之介『おゆみ!』。

回想終了

五十嵐「おゆみが止めるのも聞かず 黍之丞は刀を捨てる。」

回想

すみれ『私のことはいいから。 ご自分のお命 大切になさってください!』。

回想終了

五十嵐「極悪非道の悪党は おゆみを突き飛ばし その背中を袈裟斬りにする。 『おのれ ひきょうなり!』 怒りに燃えた黍之丞は 次々と 素手で悪党たちを倒す。」

畑野「素手。」

五十嵐「まるでカンフーのように…。」

畑野「カンフー!?」

五十嵐「そして おゆみに駆け寄る。 すると おゆみは…。」

ひなた「目を開ける! 『黍様。 ご無事でよかった』。」

五十嵐「『おゆみ!』と 背中の傷を 確かめようとする黍之丞。 はっと驚く。」

ひなた「おゆみの羽織っていた綿入れの中には 座布団が…。」

五十嵐「『これは?』。」

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