料亭
千吉「長男の稔です。 大阪商科大学の予科2年です。」
神田「おう。」
千吉「稔。 こちらは 海軍主計中佐の神田さんじゃ。」
稔「初めまして。 父が お世話になっております。」
神田「立派な息子さんですな。」
千吉「神田さんが大阪にご用があると伺うて わしも来ることにしたんじゃ。 おめえを紹介してえと思うてな。 この度 神田中佐のお骨折りで 雉真への軍服の発注数を 倍増していただけることになったんじゃ。」
稔「はあ。」
神田「雉真さんの製品は 足袋も学生服も 丈夫なことで知られていますからな。 技術を存分に生かして 帝国軍人にふさわしい軍服を どんどん作っていただきたい。」
稔「名誉なことです。 ありがとうございます。」
千吉「いずれは これに 雉真を任せるつもりでおります。 若輩ですが どうぞ ごべんたつください。」
橘家
お菓子司・たちばな
金太「何ら。」
算太「うん?」
金太「おめえが店番しょうったんか。」
算太「いや? 母ちゃんが ちょっとの間 座っといてって。」
金太「じゃから そりょう店番いうんじゃ。 こりゃあ! 売りもんぞ。」
算太「あ~ うめえなあ。」
金太「当ったりめえじゃあ。」
算太「神戸でも大阪でも うちおり うめえ菓子ゅう 食うたことがねえで。 おう 母ちゃん。 ほんなら。」
小しず「やっぱり 分かっとるんですねえ お菓子の味は。」
金太「あいつ 本当は戻りてんかな うちの仕事。 あいつのことじゃ ダンサーにゃあなれなんだ 諦めたいうて 言い出せんのじゃねえじゃろうか。」
映画館
卯平「おっ お~! 算太!? ハハハハッ 久しぶりじゃのう!」」
算太「ああ 豆腐屋のおっちゃん! お~! え~ どうじゃった?」
卯平「ああ そりゃあ モモケンが最高じゃ。」
算太「おう そうじゃろ そうじゃろ。 わしゃあ 新人の頃から 目ぇつけとったんじゃ。 こりゃ 阪妻もアラカンも 超える逸材じゃいうて。」
卯平「本当か? アハハハ。」
算太「おう。」
卯平「おめえは調子がええんじゃから。」
算太「じゃあのう。」
田中「ちょっと すんまへん。」
卯平「おう。」
田中「この辺に たちばないう菓子屋ありまっか。」
卯平「ああ それじゃったら 今 そこに息子の…。 あ… おりゃあせんわ。 えっ? おったんよ。」
喫茶店・ディッパーマウス・ブルース
定一「お~ 頂きます。 うん! うん うめえ! これ うちのコーヒーにぴったりじゃ。」
安子「アハハッ。」
健一「父さん わしの分も置いといてよ。」
安子「ご注文いただいて うれしかったです。」