俳優会館
休憩所
ひなた「あと一枚だけ。」
五十嵐「しつこいな。」
ひなた「何で~?」
テレビ・矢代『亡き 初代桃山剣之介の遺作となった 『妖術七変化 隠れ里の決闘』 この映画を…』。
会見
八代「二代目剣之介主演で 再映画化することを ここに発表いたします。 メガホンをとりますのは テレビ版『黍之丞』シリーズを 長く演出しております轟 強です。」
「どなたの発案ですか?」
八代「二代目です。」
「大変 失礼ですが 『妖術七変化 隠れ里の決闘』は 先代の主演映画としては 最も興行成績が悪く 批評家からも酷評されていました。 なぜ この作品を選ばれたんですか?」
剣之介「酷評されていたからこそ。 …とだけ申し上げておきましょう。」
八代「え~ この映画の制作にあたり 一つ 告知がございます。」
剣之介「それは 私が。 この映画において 黍之丞の敵役となる 小野寺左近という人物。 この役を演じる俳優を広く募り オーディションで選考いたします。」
休憩所
テレビ・剣之介『年齢 経験は問いません。 我こそはと思う方は 是非 応募してください』。
平岡「年齢 経験問わんということは…!」
園山「大部屋でもええんか?」
岸「千載一遇のチャンスやで これ!」
平岡「おう! ホンマや。 うわ~ サインの練習しとかな あかんやん。」
岸「早い 早い。」
園山「受かる気満々やがな。」
平岡「ホンマに。」
テレビ『高山さん。 意気込み お聞かせください』。
テレビ・高山『大先輩の皆様方に…』。
大月家
回転焼き屋・大月
るい「はい 熱々1つ。」
五十嵐「ありがとうございます。」
るい「おおきに。」
ひなた「ホンマに受ける気なん? オーディション。」
五十嵐「当たり前だろ。」
広場
ひなた「テレビ出てる有名な俳優さんらかて 受けるんやろう?」
五十嵐「多分な。」
ひなた「勝ち目あるん? 万年死体役のあんたが受けて。」
五十嵐「お前でも ミス条映のコンテストに出られただろ。」
ひなた「お前でもって どういうこと!」
五十嵐「虚無蔵さんに特訓してもらうよ。」
ひなた「虚無蔵さん?」
五十嵐「だって 虚無蔵さんの演じた役の オーディションだから。」
ひなた「あ~ そうか。」
一恵「ひなちゃん。」
ひなた「あっ いっちゃん。」
一恵「久しぶり。」
ひなた「久しぶり。」
五十嵐「じゃあな。」
ひなた「ああ また。」
一恵「どっかで…。」
ひなた「思い出さんといて。」
一恵「ああ コンテストで ひなちゃんに斬られてはった人か。」
ひなた「思い出さんといてて。」
一恵「俳優さん?」
ひなた「うん 一応な。」
一恵「ふ~ん。」
ひなた「何? 今日 短大の帰り?」
一恵「うん。」
ひなた「お~。 あか抜けたのう おいち。 フフフフッ。」
一恵「あっ なあ ひなちゃん。」
ひなた「うん?」
一恵「映画村で バイト募集してへん?」
ひなた「えっ?」
俳優会館
休憩所
榊原「へえ~ お父さんが日本舞踊のお師匠さん。 お母さんが茶道の先生。 はあ~ 芸事一家やなあ。」
一恵「それが嫌なんです。 何や 生まれた時から 人生決められてるみたいで。 せやから 短大の間に いろんなこと経験しときたい思て。」
榊原「まあ でも その特技は うちでは役に立つやろから。 僕から人事に 話 通しとくわ。」