連続テレビ小説「カムカムエヴリバディ」第80話「1983-1984」【第17週】

2人「ありがとうございます。」

すみれ「ちょっと 榊原。」

ひなた「もはや呼び捨て…。」

榊原「はい!」

すみれ「何で 女優のオーディションはないのよ。」

榊原「えっ?」

すみれ「モモケンさんの映画のオーディションよ!」

榊原「すいません。 その辺りのことは 全く僕の管轄外で…。」

すみれ「何で 女優にはチャンスがないのよ。」

榊原「この企画は ミス条映の売り出しも兼ねてますんで。」

すみれ「ミス条映? フッ 若いだけの大根でしょ?」

一恵「ひなちゃん あの人…。」

ひなた「うん。 美咲すみれさん。」

一恵「美咲すみれ!?」

ひなた「うん。」

一恵「…って誰?」

ひなた「いっちゃん!」

一恵「えっ?」

ひなた「何 言うてんの!」

すみれ「ひなた!」

ひなた「はい。」

すみれ「今日は つきあいなさいよ!」

ひなた「は… はい。」

道場

虚無蔵「ふん! ふん! ふん! うん! ふん! ふん! ふん! ふん!」

そば処・うちいり

すみれ「そもそも ろくな男じゃないのよ。 あの二代目モモケンは!」

ひなた「えっ?」

すみれ「あんた 先代のモモケン知ってる?」

ひなた「モモケンさんのお父さんですよね?」

すみれ「そう。 初代モモケン。 初代黍之丞。 ただし 映画でね。 先代は 映画一筋の人だった。 でも 息子である二代目は これからはテレビの時代だって 先代と仲たがいしたの。」

ひなた「仲たがい…。」

すみれ「そのくせ 先代が亡くなった途端に 二代目モモケンを襲名してさ 今度は 先代の遺作を再映画化だなんて。 全く 調子いいったらありゃしない。」

ひなた「すみれさん… やめてください。 おゆみちゃんが黍之丞の悪口言うの 聞きたくありません。」

すみれ「かわいそうなのは虚無さんよ…。」

ひなた「虚無蔵さん?」

すみれ「条映の中じゃあ 有名な話だけどさあ 本当は あの映画 先代と二代目のモモケンの 親子共演で企画されてたらしいわよ。」

ひなた「えっ?」

すみれ「でも とっくにテレビのスターだった 二代目が それを拒否した。」

ひなた「そうやったんですか…。」

すみれ「それで 先代は 当てつけみたいに 大部屋の一人だった 虚無さんを抜てきしたの。 でも映画は大失敗。 駄作だって言われて 先代は失意のうちに亡くなって 虚無さんは大部屋に逆戻り。 今も虚無さんがいる条映で あれを再映画化して しかも 左近の役を オーディションで選ぶなんて… 虚無さんに対しての 一世一代の嫌みじゃない!」

吉右衛門「あの大抜てきは そういうことやったんですか。 これで 長年の疑問が晴れました。」

ひなた「ケチエモン。」

吉右衛門「誰がケチエモンや。」

ひなた「すいません。 あっ 吉之丞のおじちゃん。 おばちゃん。 おばあちゃん。 こんばんは。」

初美「こんばんは。」

清子「こんばんは ひなたちゃん。」

吉之丞「おい ひなた。」

ひなた「あっ 吉之丞。 オッス。」

吉之丞「そちらのお方は もしかして…。」

ひなた「うん。 美咲すみれさん。 映画村で お世話になってんねん。」

吉之丞「やっぱり おゆみちゃん! サインください。」

すみれ「あ… フフッ。」

初美「吉之丞 失礼やないの。」

すみれ「構いませんよ~! フフッ。」

吉之丞「ありがとうございます!」

すみれ「箸袋?」

初美「いや… 吉之丞! 失礼やない! せめて伝票の裏にしなさい。」

すみれ「それも失礼よ!」

初美「すいません!」

すみれ「私を誰だと思ってるの!? 美咲すみれよ!」

(吉之丞 初美 すみれの騒ぐ声)

ひなた「おじちゃん。 そないにモモケンに興味あったん?」

吉右衛門「何しろ 私は 初代モモケンが デビューした年に生まれた男やさかいな。」

ひなた「え… そうなん?」

吉右衛門「うん。」

ひなた「古い話やなあ。」

清子「あの日は にぎやかやったわ。」

ひなた「にぎやか?」

清子「私が 朝早うに産気づいてしもてねえ。 まだ お豆腐屋さんしか開いてへんような 時分やったわ。」

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