連続テレビ小説「カムカムエヴリバディ」第80話「1983-1984」【第17週】

ひなた「へえ~。」

清子「主人が店先につけっ放しのラジオ置いて 産婆さん呼びに行ったん。」

吉右衛門「そしたら その隙に それを盗みよったやつがおったんや。」

ひなた「え~!」

吉右衛門「けしからん話や。」

清子「まだテレビもない時代で ラジオは貴重やったんえ。」

ひなた「え… 捕まったんですか? その盗人は。」

清子「近所の和菓子屋さんの子ぉの ちょっとした いたずらやった。」

ひなた「いやいや… いたずらで済まへんでしょ。 奉行所へ引っ立てんと。」

清子「大将が 紅白まんじゅう持って お祝いに来てくれはって 主人も それで機嫌直したんえ。」

吉右衛門「何て言うたかいなあ あの店。」

清子「さあ…。 あのお店の名前も あの子の名前も忘れてもたなあ…。」

吉右衛門「あの町の人ら 皆 どないなったやろう。」

清子「戦争やったさかいなあ…。」

吉右衛門「お父ちゃん…。 よう 私のこと かわいがってくれてなあ…。」

清子「ひどいこと言うてしもた。 あれが 今生の別れになるとは思わんと…。」

吉右衛門「お父ちゃ~ん!」

清子「あなた!」

(泣き声)」

すみれ「はい どうぞ。」

吉之丞「ありがとうございます。」

初美「ありがとうございます。 一杯どうです?」

すみれ「え~。 ヘヘヘッ。 まあ。 もう そんあ酔わせてどうする…。」

ひなた「何の話やったっけ…。」

すみれ「あっ いやいや… あ~! うん。 やっぱり 色紙がいいわね。」

初美「ああ。 ねえ 箸袋だなんて…。」

吉之丞「すいません 失礼しました。 いや… なかったから 色紙が…。」

すみれ「よかった。 あって よかった。」

吉之丞「あって よかった。 ありがとうございます。」

俳優会館

道場

五十嵐「虚無蔵さん!」

虚無蔵「文四郎。」

五十嵐「雑巾がけなら俺がしますよ。 虚無蔵さん。 左近の殺陣 教えてください。 絶対に オーディションで勝ち取りたいんです。 お願いします。」

虚無蔵「断る。」

五十嵐「えっ…。」

中庭

五十嵐「くっ…! えい。 えい。 えい。 やっ!」

ひなた「五十嵐。 おはよう。」

五十嵐「おう おはよう。」

ひなた「どないしたん?」

五十嵐「何が?」

ひなた「虚無蔵さんに 左近の殺陣 教えてもらうんやなかったん?」

五十嵐「断られた。」

ひなた「えっ?」

五十嵐「教えるつもりはないって。」

道場

剣之介「虚無さん。 悪く思わないでくださいね。 この度のオーディション。 それじゃあ。」

虚無蔵「モモケンさん。 わしも受けますわ。」

剣之介「えっ?」

虚無蔵「左近役のオーディション。」

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