五十嵐「はい。」
錠一郎「そやろなあ。 こっちの言葉やないもん。」
ひなた「あっ そう言われたらそやな。」
るい「えっ 今 気付いたん?」
ひなた「あんた どっから来たん?」
錠一郎「ひなた。 それ 野良犬に声かける時のやつや。」
ひなた「ああ。」
五十嵐「東京だよ。」
ひなた「えっ! 生意気に。」
桃太郎「ジャイアンツファン?」
五十嵐「えっ?」
るい「今は 1人暮らし?」
五十嵐「はい。 条映のすぐそばにアパートを借りてます。」
ひなた「えっ 親の仕送りも何もなしに?」
五十嵐「当たり前だ。 時代劇俳優になるって言って 家を飛び出したんだから。 甘えられるわけないだろ。」
錠一郎「偉いなあ。」
ひなた「後先考えてへんだけちゃう?」
るい「ひなた。」
五十嵐「そうだ。 後先考えないくらい 夢中になれうものを見つけたから。 あんおでっかいスクリーンの真ん中で モモケンさんにも誰にも負けない 世界一かっこいい大立ち回りを 俺はしたい。 それが 俺の夢なんだ。」
玄関
五十嵐「ごちそうさまでした。」
ひなた「あっ 五十嵐。 あ… これ。 まあ 残りもんやから 熱々やのうて悪いけど。」
五十嵐「ありがとう。 映画も。」
ひなた「ああ ええて ええて。 タダ券やし。」
五十嵐「俺… 怖くなってきた。」
ひなた「えっ?」
五十嵐「今日の 虚無蔵さんの左近の殺陣 見て。 俺 できるようになんのかな。 あんな すごい殺陣。 オーディションまで どんな稽古したって あんなレベルには…。」
ひなた「何 言うてんの。 あんた アラカンの五十倍なんやろ? モモケンさんにも 誰にも 負けへんのやろう? 受ける前からビビッて どうすんの。 頑張り。 応援してるから。」
五十嵐「うん。」
ひなた「うん。」
五十嵐「おやすみ。」
ひなた「おやすみ。」
ひなた「(心の声)『あれ? 私 今 応援してるって言うた? 五十嵐のこと。 何でやろ…。』」