ひなた「何で そない呼ばはるんですか?」
算太「う~ん あいつは昔 団五郎っちゅう名前じゃったんじゃ。」
ひなた「そしたら 団五郎時代からのお知り合いですか?」
算太「ああ。 思えば長えつきあいじゃ。」
ひなた「あの~ ホンマなんですか?」
算太「うん?」
ひなた「『妖術七変化』いう映画 ホンマは 先代と二代目のモモケンさんの 親子共演のはずやったて。 それ モモケンさんが拒否して 怒った先代が 当てつけで 無名の虚無蔵さんを抜てきしたて。 ももけんさんは 虚無蔵さんへの一世一代の嫌みで 左近役をオーディションをするて。 サンタさん。 何か知ってはりますか?」
算太「まあ… これでも見てけえ。」
<それは 初代桃山剣之介の映画の リバイバル上映のチケットでした>
ひなた「うん? どういうこと…?」
別日
♬~(テレビ)
ひなた「なあなあ いっちゃん。 今度の休み 一緒に行こうなあ。」
一恵「嫌やて。 一人で行き。」
ひなた「そうかて 2枚もろたんやもん タダなんやから行こ。」
一恵「タダほど高いもんあらへんわ。 何で そんな当たらへんかった映画 見に行かなあかんの。」
ひなた「いっちゃ~ん…。」
(足音)
ひなた「あっ 五十嵐。」
五十嵐「それ… 俺にくれ。」
ひなた「えっ?」
五十嵐「頼む。」
ひなた「何で あんたにあげなあかんの。」
五十嵐「オーディションに備えて 見ておきたいんだ!」
ひなた「欲しかったら土下座して頼みい。」
一恵「ひなちゃん!」
ひなた「冗談やて。 五十嵐はプライド高いから そんなこと…。」
五十嵐「頼む! このとおりだ! 俺に譲ってくれ~!」
ひなた「ちょっと ホンマにしんといてえな。 私が悪代官みたいやんか。」
五十嵐「頼む!」
電車
ひなた「(心の声)『何で…? 何で こいつと…。 まあ ええか。』」
大月家
回転焼き屋・大月
「ほな 行こか。」
「うん。」
「ものすごくおいしかった。」
「ねえ。」
錠一郎「あっ ありがとうございました。」
「ごちそうさま。」
「ごちそうさまでした。」
るい「おおきに ありがとうございました。 またね。」
「ごちそうさまでした。」
るい「どうも。」
錠一郎「あれ? ひなたは?」
るい「映画やて。」
錠一郎「へえ~。 誰と?」
るい「いっちゃんに断られたからいうて ほら 五十嵐君いうて あの 大部屋の。」
錠一郎「ああ いっつも熱々買う子か。」
るい「そう。」
錠一郎「何 見に行ったんやろ。 えっ!?」
るい「何の巡り合わせやろねえ。」