すみれ「あんた 全然ウーロン茶が進んでないわね。」
ひなた「あ… すいません。 抹茶で おなか タポタポで…。」
すみれ「もっと内臓鍛えなさいよ!」
俳優会館
道場
ひなた「はあ…。 そら そうやな…。」
大月家
玄関前
ひなた「はあ…。」
<ひなたは もう何日も 五十嵐に会えずにいました>
野田家
茶室
一恵「もういっぺん。 もういっぺん 最初から。 もういっぺん。」
すみれ「もう嫌! はあ やってらんない!」
一恵「すみれさん!」
すみれ「榊原。」
ひなた「え…。」
榊原「すみれさん。 稽古を続けてください。」
すみれ「嫌よ。」
榊原「京都茶道家殺人事件」は あなたのための企画です。」
すみれ「はあ? 主演でもないのに? 大体 映画やドラマならともかく たかが映画村のステージよ? 客の半分 子供よ? お茶のお作法なんて本気でやったからって 誰が見てるっていうのよ!」
榊原「僕が見てます! ちゃんと僕が見てますから。 お願いします。 稽古を続けてください。」
すみれ「撮影所の重役ならともかく 映画村の平社員が見てたからって 何になるのよ!」
一恵「すみれさん。」
ひなた「すみれさ…。」
すみれ「何よ!」
一恵「榊原さんは ここが すみれさんの正念場や思てはるんです。 それは つまり 榊原さんにとっても 正念場なんやと思います。 せやから 私も 未熟ながら お手伝いさしてもろてはるんです。」
榊原「野田さん…。」
一子「はい そこまで。 みんな 座りよし。」
俳優会館
道場
五十嵐「あっ… すみません。 もう一回お願いします。」
虚無蔵「今日は ここまで。」
五十嵐「でも まだ時間が…。」
虚無蔵「雑念のある限り いい殺陣はできん。」
五十嵐「あ…。」
野田家
茶室
一子「さあ。 落ち着いたか? お茶はなあ 作法の正確さでもない。 仕事の成功の道具でもない。 相手のこと思う気持ちや。 それだけのもんや。」
ひなた「(すすり泣き)」
一子「ひなたちゃん? 何で あんたが泣くん。」
ひなた「(すすり泣き)すいません。 失礼します。」