連続テレビ小説「カムカムエヴリバディ」第89話「1984-1992」【第18週】

俳優会館

中庭

すみれ「あっ ひなた。」

ひなた「あっ すみれさん。 おはようございます。」

すみれ「もしかして五十嵐 捜してる?」

ひなた「えっ? 見はりましたか? どこで?」

会議室

五十嵐「申し訳ありませんでした。」

轟「ああいう気分の夜もあるやろ。 …って凛太朗さんは言うてくれてはる。 『自分のことだけやったら こらえたんやけど』って。」

五十嵐「すみません。」

畑野「けど そこは将軍様や。 寛大なお裁きを下してくれはった。」

轟「凛太朗さんも お前の殺陣を買うてくれてはるんや。 けどな わしらは条映として 『破天荒将軍』の演出として 全くの不問に付すいうわけには いかんのや。」

五十嵐「はい。」

轟「この先一年 『破天荒将軍』には出さん。 よそのドラマも 凛太朗さんに気ぃ遣て お前を外す監督がいてるかもしれん。」

廊下

五十嵐「はあ~。」

野田家

茶室

榊原「ちょっとお茶飲みませんかって 喫茶店でも行くのか思ったら…。」

一恵「私 立派や思います。 榊原さんのこと。」

榊原「えっ?」

一恵「落ち目やった すみれさんに 辛抱強う仕事作って。 シリーズ持つとこまで 復活させはって。 そやから… 何か 見てて つらうて。」

榊原「えっ…。 そ… それは…。 バレてたいうこと?」

一恵「バレバレです。」

榊原「はあ… おいしい。」

一恵「ありがとうございます。」

榊原「野田さん。」

一恵「はい。」

榊原「僕は満足なんや。 すみれさんが機嫌よう笑てくれはったら それで。」

一恵「榊原さん…。 あほですね。」

榊原「はっきり言うたなあ。」

一恵「でも… みんな あほですよね。 人を好きになるやなんて あほやからやと思います。 傷ついたり 傷つけられたりしながら… それでも… 人を好きになるんやから。」

俳優会館

休憩所

五十嵐「俺…。 役者やめるよ。 そんな大きくないけど 親父が会社経営してて。 一番上の兄貴が副社長やってる。 そこで働こうと思う。 だから ひなた。 一緒に東京に帰ってほしい。 ひなたと結婚しようと思ったら…。 それしかないんだ。」

ひなた「何で? 何で そんなこと言うの? 私 言うたやんか。 待ってるって。 文ちゃんが納得できるまで待ってるって。」

五十嵐「来ないんだ。 そんな日は来ない。 ここにいる限り。 一番大事なものは何かって考えた。 ひなたなんだ。 かなわない夢なんかじゃなくて。 ひなたと一緒にいることが 俺にとっての…。」

ひなた「うそ言わんといて。 私を言い訳に使わんといて。 夢から逃げる言い訳に。 文ちゃんの夢は 私の夢や。 文ちゃんは アラカンの五十倍 モモケンさんの百倍 すごい時代劇スターになれる。 そうなる人や。」

ひなた「そのためやったら 私 何でもする。 どんな苦労かて 耐えてみせる。 文ちゃんと一緒やったら どんなことかて乗り越えられる。 私かて 結婚資金ためてんねん。 定期で積み立てしてんのやで。 なっ? 一緒に頑張ろ。 文ちゃん。」

五十嵐「ひなた。 ひなた。」

ひなた「文ちゃん。」

五十嵐「どうして お前は そんなばかなんだよ。」

(すすり泣き)

五十嵐「ひなた…。」

(すすり泣き)

五十嵐「ひなた。」

ひなた「どないしたん 文ちゃん。」

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