桃太郎の部屋
ひなた「桃。」
桃太郎「勝手に入ってくんな。」
ひなた「今 ケチエモンが来たで。 何考えてんの。 今 お母ちゃんが謝りに行ってる あんたも行き。 お姉ちゃんも一緒に行ったげるさかい。」
桃太郎「うるさい!」
ひなた「行くで! はよしい!」
桃太郎「うるさい言うてるやろ!」
ひなた「桃… 桃!」
居間
ひなた「桃。 あんた かっこ悪いで! めちゃくちゃ かっこ悪い! 小夜ちゃんに失恋したからって 吉之丞に取られたからって 吉之丞の店から 物 盗むやなんて。 悔しかったら 野球に ぶつけたらええやろ? レギュラーになったんやろ?」
桃太郎「レギュラーなんか とっくに外されたわ。」
ひなた「えっ…。」
桃太郎「もう ずっと行ってない。 夏休みの部活も。」
ひなた「何で? あんなに頑張ってたやない。 野球と失恋 関係あらへんやない!」
(足音)
桃太郎「ずっと好きやったんや。 子供の頃から。 はよ大きなりたかった。 小夜ちゃんのために。 僕が小1の時 小夜ちゃんは高3で 僕が中1の時 小夜ちゃんは もう学校の先生で…。 いつになったら追いつけるんやろ。 いつになったら 小夜ちゃんに ふさわしい男になれるんやろ思いながら 勉強も野球も頑張ってきた。 それやのに… 何で 小夜ちゃん… 待っててくれへんかったんや。」
(すすり泣き)
桃太郎「何で…。」
(すすり泣き)
ひなた「はあ~。 何や それくらい。 お姉ちゃんなんか 7年待たされたあげくに振られたんやで!? それでも仕事に打ち込もう思て 結婚資金つぎ込んで 英会話スクール行ったけど な~んも見につかへんし。 残ったお金で 本買い込んだけど 机が狭なっただけで…。 聞き流し教材買お思たら もう貯金が底ついてて…。
ひなた「それで あんたに CDプレーヤー借りに行ったんや。 そしたら どや! その結果 弟が窃盗犯になるやなんて…。 はあ~ もう… こんな あほらしい人生があるか!? はあ… 惨めさやったら お姉ちゃんの方が上や!」
桃太郎「ほな 僕の桃太郎いう名前は どないなるんや!」
ひなた「はあ!?」
桃太郎「どないなセンスで付けてんねん!」
ひなた「かわいいやない!」
桃太郎「どこが!」
ひなた「モモケンさんに謝り!」
桃太郎「知るか!」
るい「ちょっと もう やめなさい!」
桃太郎「何や。」
るい「もう!」
桃太郎「何でや。」
(足音)