清子「吉右衛門。 もう それくらいにしとき。 おめでたい時なんやさかい。」
吉右衛門「しかしやなあ。」
清子「昔 お父ちゃんは 堪忍したげたはったえ。」
吉右衛門「それは知ってるけど。」
吉之丞「ただいま。」
清子「お帰り。」
吉之丞「何や きょうだい そろて。」
ひなた「あ… まあ ちょっと…。」
桃太郎「吉之丞さん。 結婚おめでとうございます。」
吉之丞「おっ…。 な… 何や もう小夜子から聞いたんか?」
大月家
物置
るい「ありがとう。 けど…。 うそやんね? 諦めたやなんて。 私は信じてる。 またジョーさんが トランペット吹ける日が来るって。」
錠一郎「時々 試してた。 今日みたいに。 ある日 突然 治ってるかもしれへん思て。 けど あかんかった。 この30年 何べんも試したけど あかんかった。 初めは しょっちゅう。 そのうち 月に1回 3か月に1回 半年に1回…。」
錠一郎「ここ10年は 何年かに1回くらいになった。 トランペットを持つ。 口に マウスピースを当てる。 息を吹き込む。 夢みたいな音が出る。 薄れていくんや。 あの感覚が。 トランペットが… 僕に さよならを言うてる。 そんな気がするんや。」
荒物屋・あかにし
錠一郎「あ~ ハズレ~ 残念。 でも これ。 メリークリスマス。」
節子「メリークリスマス。」
錠一郎「はい 次の方。」
「お願いします。」
錠一郎「は~い。 1 2 3 4… 10枚だから 10回。」
森岡「ちゃう ちゃう ちゃう! これ 補助券や。」
錠一郎「あっ ホンマや。」
森岡「1回な。」