回想
シラー「NINJAが 現代の東京によみがえって 夜の街を飛び回る話にしようかと 思ってるんだ。」
回想終了
ミワ「はい。 そのあと 帰りに 八海サマと二人で 神社を歩きました。」
さくら「神と神社で二人きり!? それ もはや神話だから! うわあ… ダメだ すごすぎて 脳が追いつかない。 っていうか あんた 何で そんな冷静でいられるの?」
ミワ「冷静っていうか 怖いんです。 なりすましが明るみになったら 彼らの好意も信頼も 全て裏切ることになるから…。」
回想
藤浦「ミワさんは 家政婦として まだまだ頼りないところはあるけど 人をだましたりするような人間じゃない。」
池月「仕事は丁寧だし 整理整頓がすごいじゃん。」
一駒「あっ お水いりますか? どうぞ。 はい。」
ミワ「あっ ありがとうございます。」
一駒「ロッカーに入れとく?」
回想終了
さくら「苦しいんだ? 社会的地位を失うことよりも 他人を裏切ることのほうが ずっとずっと。」
ミワ「…はい。」
さくら「他人の人生を尊重して 敬意を払って そんな人だもんね 久保田さんって。 カマトトぶってんじゃねえよ!」
ミワ「か… かまと と?」
さくら「そんなの全部言い訳で ホントは 八海 崇と離れたくないだけなんでしょ? 人生をかけて追いかけている 『神』が 『男』が 自分を気にかけてる そんな奇跡を失いたくない。 そうなんでしょ?」
<そうかもしれません>
さくら「はあ… みんな幸せそうだよね。 家族や恋人と 幸せ そのもの。 この幸せを手に入れるために みんなが どんな代償を払ってるか 想像したことある?」
ミワ「いえ…。」
さくら「憧れの異性を振り向かせるために 理想の地位を手に入れるために 何をしてると思う? ウソをつくの。」
ミワ「ウソ?」
さくら「そう。 例えば 就職面接で 『ありのままの私を 受け入れて下さい』なんて言う学生 どこも採用しないよね? 仕事でも恋愛でも みんな その理想に合わせて ギリッギリのところでウソをつく。」
さくら「なりふり構わず 死に物狂いでね。 で 久保田さんは? 八海 崇という世界一の理想を前にして 何をすべきだと思う?」
ミワ「分からないです。」
さくら「演じるのよ。」
ミワ「えっ?」
さくら「好意だとか信頼だとか そんなきれい事は一切忘れて 今の奇跡的な立場 八海 崇にとって掛けがえのない存在という立場を死守する。 そのためには… 美羽さくらを演じきるしかない。」
ミワ「…さくらさん。」
さくら「まあ とりあえず これ 受け取ってよ。 はい。 じゃあ また来るね。」
ミワ「はあ…。 はあ…。」
(風鈴の音)