夜ドラ「ミワさんなりすます」(第21回)

キッチン

ミワ「はあ… 息が詰まりました。」

一駒「いや 思ったより事態は深刻ね。」

池月「何か分かりました?」

一駒「ご主人様は 話を終わらせたがってた。 もう自分で決めたことだからって。 ねえ?」

ミワ「はい…。」

池月「え~ 何を決めたんだろう。 新しい映画のオファーとかですかね。」

一駒「いや そういう類いの話ではないわね。 もっと深刻な感じ?」

ミワ「ですね。」

池月「SNSは もうやりたくないとか?」

一駒「SNSか…。」

池月「最近なりすましのアカウントも増えたし。」

ミワ「なりすまし?」

池月「ほら 『八海 崇』で検索したら いっぱい ニセモノのアカウントが出てくるの。 中には フォロワー3万人とかのやつもあって。」

一駒「あきれた! なりすましなんて 何でやるのかしら。」

ミワ「…本当に。」

池月「承認欲求とか自己啓示翼… なんですかね?」

<私の場合は ただ八海サマのそばにいたいという あさましき欲望>

一駒「ミワさん。」

ミワ「はい。」

一駒「どう思う? なりすましって。」

ミワ「…最低だと思います。」

藤浦「お茶を一杯もらえる?」

ミワ「あっ か… かしこまりました。」

<ファンの間で知られているのは 八海サマの仕事を最終的に決めているのは 藤浦さんで 八海サマも 彼女に 全幅の信頼を寄せているという話。 それが ここにきて その関係性に 変化が起きているのだろうか>

藤浦「明日から 敷地全体の清掃を強化します。 ほこりひとつ残らないよう 徹底してお願いしますね。」

一駒「はい。」

池月「はい。」

ミワ「はい。」

池月「大掃除したばっかりなのに…。」

一駒「はあ… こっちにまで ピリピリしないでほしいわね。」

書斎

ミワ「どうぞ。」

八海「ああ ありがとうございます。」

ミワ「あの… 昨日は ゼリー ありがとうございました。」

八海「こちらこそ 突然お邪魔しまして。 風邪は もう大丈夫ですか?」

ミワ「はい おかげさまで。」

八海「それはよかった。」

ミワ「失礼します。」

八海「あの… ミワさん。」

ミワ「はい。」

八海「ミワさんのご意見を伺ってもいいですか。」

ミワ「あ… えっ。」

<SNSの件か はたまた ご自身の進退についてか…>

八海「これなんですが。」

ミワ「えっ… 『プロフェッショナル』?」

八海「先日 この番組の 出演のオファーを頂いたんです。 ご覧になったことはありますか?」

ミワ「あっ はい。」

八海「私は ほとんど見たことないんですが。」

ミワ「ああ…。 その道の第一線で活躍されている方が 取り上げられるんです。 ふだん テレビで見られないような 職人さんとかも。」

八海「ああ なるほど。」

<これに出るかどうかで悩んでいたのか。 確かに この番組は 仕事以外のプライベートにも 密着しているイメージ。 藤浦さんは やらせたいけど 八海サマは乗り気じゃない ということ?>

ミワ「長期間にわたって密着されるので なかなか大変そうですよね。」

八海「ええ。」

ミワ「見ているほうは 仕事のやりがいとか 苦労が分かって楽しいですけど。」

八海「この件に関して 藤浦さんと 意見が真っ二つに分かれてしまって。 これまで仕事のオファーは 最終的に彼女の判断を任せていました。 それが最近 果たして それでいいのかと 考えるようになってしまって。 もちろん 彼女を信頼してないわけでは ないんですが。」

ミワ「はい。 番組出演のオファー お断りするんですか?」

八海「いえ 受けようと思ってるんです。」

ミワ「えっ!?」

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