リビング
八海「少しっていうか すごく好きなんじゃないですか?」
ミワ「えっ…。」
八海「ミワさんに見つけてもらった台本は 自主制作のほとんど世に出てない作品なんです。 少し好きぐらいじゃ分かるはずがない。」
ミワ「でも 八海さんの前で 映画ファンというのは 恐れ多くて…。」
八海「最近のものでは どんな映画が印象に残ってますか?」
ミワ「そうですね… ちょっと前ですが 『パラサイト』とか。」
八海「ああ あれは確かに名作です。 こちらの心を 実に巧みにえぐってくる。」
ミワ「住居の位置 貧富の差 コメディーとサスペンス 全てのギャップが美しくて 心がギュッと締めつけられました。 それと あの作品には…。」
八海「おほど お好きなんですね。 映画。」
ミワ「いや そんな 私なんか とても。」
八海「仕事柄 いろんな映画人に会ってますから 目の輝きを見れば分かります。 ああ 『パラサイト』か。 だったら あの空のシーン よかったですよね。」
ミワ「はい。 絶妙な色合いだと思います。」
八海「え… 今ので どのシーンか分かったんですか?」
ミワ「あ… はい。 多分 あそこかなって。」
八海「見てみましょう。 あの映画 確か今 配信されてますよね。 え~っと… これはどうするんだ。」
<憧れの八海サマと映画の話をする 世界線があったなんて…。 高校生の自分に教えてあげたい。 いろいろ苦労はあるし 報われないことも多いけど 映画を好きな自分は 間違っていなかったと>
八海「あれ? ここじゃなかったか。 えっと じゃあ どこだ?」
ミワ「あの… 56分24秒辺りだと思います。」
八海「えっ 56分…?」
ミワ「24秒。」
八海「24…。 えっ? おおっ ここだ! ここです! えっ 何で? ミワさん 何で分かったんですか!?」
ミワ「いつもメモを取りながら見るので 好きな映画のことは覚えているんです。」
八海「ミワさん。」
ミワ「はい。」
八海「お茶をいれて頂けますか。」
ミワ「は… はい ただいま。」
八海「2つ。」
ミワ「え?」
八海「ミワさんの分も。 もう少し映画の話 しませんか。」
<神様。 こんなこと あっていいのでしょうか>
八海「藤浦さんのことが気になりますか?」
ミワ「いえ そういうわけでは…。」
八海「大丈夫です 私から うまく話しておきますから。」
ミワ「あの… 八海さん。」
八海「はい。」
ミワ「私…。」
(ドアの開く音)
藤浦「ミワさん。 ちょっと話があるんだけど。」
<バレ… た?>