越乃「ありがとう。」
八海「ありがとう。」
越乃「まだ あれ作ってるの? ほら ボトルの。」
八海「ボトルシップ。」
越乃「ああ そう。」
八海「こないだ 52隻目…。」
八海「ああ あれは壊れたか。」
越乃「その趣味 暗くない?」
八海「越乃さん。」
越乃「ん?」
八海「今のシーン お見事でした。」
越乃「ふふふ… はっちゃんの芝居ってさ 自分から先に 心を動かそうとはしないよね。」
八海「どういうことですか?」
越乃「相手の芝居を受け止めてから そのバランスを考えて打ち返していく。」
八海「意識したことないですけど。」
越乃「ずるいよねえ はっちゃん。」
八海「(笑い声)」
越乃「そうやって笑って。」
八海「(笑い声)」
<あんな八海さんの笑顔 見たことない。 何だろう この気持ち。 えっ まさか私 越乃さんに嫉妬してる? え… えっ なりすましの家政婦もどきが 大女優に嫉妬!?>
越乃「おいしそうね。 私にも 一つちょうだい。」
ミワ「あっ… どうぞ。」
越乃「ありがとう。」
ミワ「ふう…。」
越乃「はっちゃんはさ…。 いつまで このお仕事を続けるつもり? 引き際とか 考えてないの?」
八海「確かに そんな気持ちになる時もあります。」
越乃「そうなんだ。」
八海「でも 私の演技を求めてる人がいる限りは…。」
越乃「その人を楽しませたいんだ?」
八海「いや 楽しませたいというよりは… 狂わせたい。 たとえ その人の人生が そのあと どうなっても。」
越乃「怖っ。 はっちゃん 怖いよ。 怖い。」
八海「(笑い声)」