なつ「じいちゃん 照男兄ちゃん 私…。」
泰樹「うん…。」
照男「みんなも驚いたんだ。」
なつ「忙しいのもあったけど… びっくりし過ぎて 本当になるのが怖くて すぐに来られんかったわ…。」
照男「お葬式は 立派なもんだった。 新聞社とか テレビ局も来てたな。」
悠吉「あんな偉い画家さんだったなんて…。 いつの間にか…。」
菊介「そんなとこ 本人は 一つも見せなかったもな。」
泰樹「なつ… まあ ゆっくりして それから 会いに行けばいいべ。」
なつ「うん…。」
照男「あ… なつ 牛舎見るか?」
なつ「うん。」
旧牛舎
照男「これが ミルカーだ。」
なつ「へえ~。」
照男「これさえあれば 手搾りの時の 半分の時間で できてしまうんだわ。」
なつ「そう。」
照男「うちには 今 これが3つある。」
菊介「なっちゃん 優ちゃん 今は こうやって牛乳を搾るんだ。 おかげで おやじは もう ここに 搾乳しに来なくても よくなったんだ。」
なつ「じいちゃん 優が馬に乗りたいって言ってんの。」
泰樹「優 馬 のりたかったか?」
優「うん。」
泰樹「いや~ そりゃ ちょっと残念だったな。 馬は もう売ってしもうた。」
なつ「えっ?」
悠吉「なっちゃん 今は 馬を使ってる百姓は 随分減ってな。 今は 車とトラクターだもな。」
照男「天陽のうちでも そうやってんだ。」
なつ「したら 天陽君の家にも 馬は もういないの?」
泰樹「去年 死んだ。」
なつ「去年?」
泰樹「あの馬だ なつ…。 天陽の畑を開墾した年に来た。 25年以上 よく長生きした…。 今頃は また… 天陽と会ってるべ。」
居間
剛男「どう? 優ちゃん うまいか?」
優「うん おいしい!」
富士子「おいしいしょ。 優ちゃんが来ると思って ばあちゃんが 腕によりをかけて 作っといたんだから。」
優「ありがとう おばあちゃん。」
富士子「ああ… 優ちゃんは 本当に 礼儀作法が行き届いてるね。 なつ あんた偉いわ。」
なつ「いつも 光子さんに しつけられてるから。」
泰樹「優 こっちさ来い。 そうそうそう… こっちさ来い ハハハ…。」
剛男「何するんですか!」
菊介「こりゃ おやっさんと剛男さんの戦いだな。 そのうち 優ちゃんを食われちまうぞ なっちゃん。」
なつ「優は みんなに かわいがられることに慣れてるのさ。 昔の私と おんなじだわ。」
地平『ただいま。』
砂良「あっ 帰ってきた。」
一同「お帰り!」
砂良「ちゃんと挨拶しなさい。」
地平「なつおばさん お帰りなさい。」
なつ「うわ~ 地平君 また伸びた! まだ中学生でしょ。 どこまで伸びんのさ。」