おでん屋・風車
1階店舗
亜矢美「おっ 咲太郎。 あら 何やってんの? 昼間から。」
咲太郎「なつが落ちた。」
亜矢美「だからって 何で お前が やけ酒飲んでんの?」
咲太郎「俺は… バカだ。」
亜矢美「今頃 分かったか バカ。」
咲太郎「どうやったら なつの力になれるのか 分からない。 今まで さんざん ほっといて やっと会えたのに 住む場所さえ与えられないし 迷惑ばかりかけてるよな。 俺と会ったって あいつには 何一つ いいことなんかないよな 母ちゃん。」
亜矢美「だったら こんなことしてる場合じゃないだろ! お前が しょげてて どうやって 妹を励ますの?」
川村屋
ホール
なつ「すいません…。」
野上「どうぞ。」
信哉「悪いな 仕事中に。」
なつ「ううん 休憩もらったから。 そっちこそ 忙しいのに…。」
信哉「勤務明けなんだ これでも。 昨夜から寝てなくて…。」
なつ「今は どんな仕事してんの?」
信哉「今は サツ回りをしてる。」
なつ「サツ…?」
信哉「警察署を回って 事件を取材すること。 新人は そこで 多くのことを学ぶんだ。」
なつ「へえ~。 信さんは すごいよ。 私は… うん ダメだった。 そりゃ 信さんみたいに 努力もしてこなかったんだから 当たり前だけどね。」
信哉「何言ってんだよ。 なっちゃんが頑張って ここまで来たんじゃないか。 今 ここで生きてること全部 なっちゃんの努力だろ。」
なつ「ありがとう。 さすが記者さん いいこと言うわ。」
信哉「からかうなよ。」
なつ「ハハハ…。」
信哉「それで 夢は諦めるの?」
なつ「それが… 諦めたくないの。 バカだけど なんとかして アニメーターになれる ほかの道を探してみようって思ってる。」
信哉「そうか… じゃ 俺も その道を探すかな。」
なつ「ありがとう。」
野上「いらっしゃいませ。」
仲「あの… 奥原なつさん いますか?」
野上「あちらでございますが。」
仲「あっ…。」
なつ「仲さん 陽平さん…。」
仲「今回は 申し訳なかった…。」
なつ「あっ いいえ…。」
陽平「ちょっと いいかな?」
なつ「はい。」
陽平「あの…。」
信哉「あ… 気にしなくて大丈夫です。 あの… 僕は なっちゃんの 東京の幼なじみです。」
陽平「僕は 北海道の幼なじみです…。」
なつ「あっ どうぞ。」