なつ「そう。 まだ ダメと決まったわけじゃないの。 9月に もう一度 試験があるの。 それに受かって 必ず そこから 漫画映画を作ってみせる。 それだけは 絶対諦めたくない。 そう決めたんだわ。」
咲太郎「そうか。 俺には そうはっきり言えるものが ないってことだな。」
なつ「お兄ちゃん…。」
咲太郎「なつの言うとおりだ…。 自分のために生きてないやつは 人のことも助けられない。 今の俺じゃ… 誰の力にもなれないよ。」
なつ「お兄ちゃんは そこにいるだけで 私の力だよ。」
咲太郎「えっ…。」
なつ「お父さんの手紙と おんなじ。」
咲太郎「手紙?」
なつ「あっ…。 これ。 これを 今度は お兄ちゃんが持ってて。」
咲太郎「えっ?」
なつ「今度は お兄ちゃんの番。 私は 子どもの頃 その絵を動かしてたの。」
咲太郎「ん?」
なつ「まるで 生きてるみたいに… 頭の中で楽しんでたんだわ。 お兄ちゃんのタップダンスと 歌を思い出しながら。 家族みんなに 命を吹き込もうとしてた。 ありがとう お兄ちゃん。 その手紙と一緒に お兄ちゃんが 私を励まし続けてくれたんだよ。」
咲太郎「バカ…。 俺も踊りと歌じゃ 飯は食えねえぞ。」
なつ「それは分かってるよ。」
咲太郎「これは ずっと なつが持ってろよ。」
なつ「いいって。」
咲太郎「俺は なつに 見せてもらう方がいい。 ずっと 命を吹き込んでくれよ。」
なつ「分かった。」
咲太郎「ハッ…。」
キャバレー・スウィートホーム
咲太郎「さあ 夢のスウィートホームへ帰りましょう!」
川村屋
社員寮
なつ「頑張れ… お兄ちゃん。」
柴田家
詰め所
富士子「なつから やっと手紙が来たわ。」
剛男「おっ…。」
富士子「やっぱり ダメだったって。」
剛男「そうか…。」
明美「そしたら 北海道に帰ってくる?」
富士子「それが 諦めてないんだわ。 すんごく元気なの。」
照男「手紙なのに分かるんかい?」
富士子「手紙だって分かるっしょ。」
剛男「無理してるだけじゃないんかい。」
富士子「9月に また募集があるんだって。 それ目指すって。」
泰樹「何だ 帰ってこんのか…。 帰ってきてほしいわけじゃねえ…。」
<それから 秋の訪れを感じるようになった9月。>
東洋動画スタジオ
試験会場
<なつは 再び 東洋動画の採用試験を受けました。>