実幸「家がなくて 外で暮らしてる子どもだべ。 東京には そういう子どもが 街に たくさんいるんだって。 野良犬みたいに暮らしてて バイ菌とか 怖~い病気 いっぱい持ってるって。」
一同「ええっ!」
夕見子「ちょっと いいかげんなこと言わないよ!」
なつ「病気で死んだ子は いっぱいいました。」
一同「ええっ!」
夕見子「あんたまで言わないでよ!」
なつ「私は 夕見子ちゃんのお父さんに 助けられました。 赤の他人なのに 助けてくれたんです。 それで 北海道に来たんです。」
さち「夕見子ちゃんのお父さん 偉いね。」
大作「だけど こいつが病気だったら どうすんだよ!」
夕見子「ちょっと!」
大作「病気じゃないって 証拠見せろよ。」
なつ「証拠?」
大作「野良犬が病気かどうかなんて ちょっと見ただけじゃ 分かんねえだろ。」
なつ「フフフフ…。」
夕見子「ちょっと 何で笑うのさ!」
天陽「病気だったら とっくに その子は死んでるよ。 東京から北海道までって どれぐらい離れてると思ってんだ。」
大作「そっか…。」
柴田家
畑
剛男「ただいま。」
富士子「お帰り。 どうだった?」
剛男「大丈夫だよ あの子は賢いから すぐに慣れるよ。」
富士子「あとは 私らが 本当に あの子の親になれるかどうかだね。」
剛男「そだな。」
小学校
(ベル)
なつ「うわ~ うまい! さっきは ありがとう。」
天陽「あっ 別に。」
なつ「それ あなたんちの馬?」
天陽「うん 死んじゃったけどね。」
なつ「死んじゃったの?」
天陽「買ったけど もう死ぬ年だったんだ。 だまされたんだ。」
なつ「でも 生きてるみたい。」
天陽「絵では生きているようにしなくちゃ。 思い出すことにならないだろ。 大好きだったんだ この馬…。」
なつ「フフフ。」
柴田家
牧場
夕見子「ねえ 何で怒らないの?」
なつ「怒る?」
夕見子「嫌なこと言われたら 怒ればいいじゃない。 遠慮したって 誰も あんたのこと いい子なんて思わないよ。」
なつ「別に… いい子じゃないよ 私は。」
夕見子「ほら そういうとこ。 もっと言い返せばいいじゃない。」
なつ「言い返してるでしょ?」
夕見子「言い返してないよ。」
なつ「何て言えばいいの?」
夕見子「そんなことは 自分で考えなよ。」
なつ「難しいなあ…。」
夕見子「あんたは野良犬? 病気なんか持ってないでしょ?」
なつ「分からない。」
夕見子「えっ 分からないの?」
なつ「孤児院のお医者さんは 大丈夫だって。」
夕見子「そしたら大丈夫さ。 したら もっと怒りなよ。」
なつ「浮浪児だったのは 本当だし…。」
夕見子「それは あんたのせいじゃないしょや。」
なつ「怒らないでよ。」
夕見子「あんたが怒んないからさ。」