なつ「えっ…!」
井戸原「それは また 仲ちゃんの なっちゃんびいきなんじゃないのかい?」
仲「ひいきで 作品は決めないよ。 一つの意見。」
堀内「しかし 常盤御前が ただの母親でいいんでしょうか? 常盤御前は 再開を願って会いに来た牛若丸を 冷たく突き放しますよね? それで絶望する牛若丸が 前半の山場になる。 最初から いい母親みたいな顔していたら 牛若丸が絶望しても 客は感情移入しないんじゃないですか?」
井戸原「う~ん それはあるな…。 最初は 常盤御前を 悪者のように描いた方が 見る人に 衝撃を与えることになる。 その点では 僕は この表情に ひかれるんだけどね。」
茜「あれ もしかして 堀内さんが描いたんですか?」
堀内「違うよ。」
井戸原「これ 誰が描いたの?」
麻子「私です。」
下山「やっぱり 絵には 描く人間が出ますね。」
麻子「どういう意味ですか?」
下山「えっ いや… 女性の内面は やっぱり 女性が鋭く捉えてるな っていう意味ですけど…。」
仲「う~ん なっちゃんと マコちゃんの対決か…。 マコちゃんは 何で こうしようと思ったの?」
麻子「常盤は 初め その美貌と知性で 1,000人の女の中から選ばれ 侍女のような身分で 召し抱えられたにすぎませんでした。 そこから 源 義朝の側室に 上り詰めたんです。 常盤御前は したたかで強い女性なんです。」
一同「う~ん…。」
仲「なっちゃんは どう思うの?」
なつ「私は… そんな怖い顔の母親を 子どもに見せたくありません。」
麻子「は…?」
なつ「いや 子どもだって いろいろ考えながら見ると思うんです。 ただ怖いだけの母親 見せられて 後で優しくなっても それじゃ 納得できないんじゃないですか?」
麻子「顔が怖いからって 根っから優しくない人だと 思わないわよ 子どもだって。」
なつ「そでしょうか? 子どもには どんなに怒られた時でも 母親の愛情は伝わると思うんです。」
麻子「何の話をしてるの? あなた。」
なつ「えっ…。 漫画映画は 子どもが見るものです。 子どもが 夢を見るように 見るものだと思うんです。」
仲「まあ 確かに こっちの常盤御前も こっちの常盤御前も 内面的には 両方あるはずなんだよ。」
井戸原「そう。 結局 2人とも中途半端ってことだろうな。 一面的で 人物の奥行きが感じられない ってことだろう。」
なつ「はい…。」
麻子「はい…。」
井戸原「よし じゃ 次いこう。」
一同「はい。」
中庭
なつ「(ため息)」
下川「何かあった?」
なつ「別に何も…。」
下川「別に何も か…。 うそだね。 あった。 明らかに 何かあった。 明らかに いつもと様子が違う。」
なつ「そんなに明らかですか?」
下川「うん 明らかだよ。 だって その服装 前にも見たことあるもん。」
なつ「えっ?」