連続テレビ小説「なつぞら」第69話「なつよ、千遥のためにつくれ」【第12週】

下川「とうとう 前と全くおんなじ服装で 来ちゃったよ ハハハ…。 証拠見せようか? あのね これね…。」

なつ「いいです! いいです…。 そんな… 毎日替えるのは無理ですよ。 夏は そんな重ね着しませんし。」

下川「まあ それは許すけど… 何かあったんなら話してみなよ。 本官に話して 楽になれ。」

なつ「警察…。 あ… あの 私の住んでるおでん屋に よく来るお客さんの話なんですけど… 親戚の家から 幼い妹が 一人で家出をしたんです。」

なつ「その家では 警察に届けたって言ってるんですけど もし その子どもに何かあったんなら そういう知らせが その家にあるものですか? 路上で暮らす子どもも 亡くなる子どもも まだ たくさんいた 戦後間もない頃です。 そういう子どもが まだ生きてると思いますか?」

下川「う~ん…。」

なつ「そんなことは奇跡ですか?」

下川「あのころは 警察も 混乱していたかもしれないけど そこにいるのは やっぱり人間だからね。 僕が まだ新米で 派出所に勤務していた頃 近くの飲食店から逃げ込んできた 娘さんがいたんだ。 生活に困って娘を売るっていう記事が 新聞に載っていた頃だから その子は その店が怖くなって逃げたんだ。」

なつ「逃げてきたんですか?」

下山「店との間には あっせん業者が入っていて まだ その時点では 違法とは言えないって 警察の上司は判断した。 だけど そこにいた僕の先輩は 諦めなかった。 法律を 一生懸命 勉強して 戦後定められた日本国憲法の中に 『何人も いかなる奴隷的拘束も受けない』という条文があるのを発見して それを根拠に 娘を自由にしたんだ。」

なつ「勝手にですか?」

下山「うん。 上司も 飲食店の店主も怒ってね。 先輩は 辞職も覚悟してた…。 あっ 今 その子は 先輩の知り合いの旅館で 元気に働いてるよ。 奇跡なんてもんは 案外 人間が 当たり前のことをする 勇気みたいなもんだよ。 その勇気を持ってる人間は どこにでもいるよ。」

なつ「その先輩は 下山さんじゃないんですか? だから 警官を辞めたんですか?」

下山「僕? ハハハハ… いや いや いや…。 僕なんて 勤務日誌に 似顔絵ばっかり描いて 怒られてた人間だよ ハハハハ…。 え~ だから辞めたんだ ハハ…。 きっと そのお子さんも 誰かに助けられてるんじゃないかな。」

なつ「そうですよね…。」

下山「ほら… 早く食べなよ それ。」

なつ「はい…。」

下山「ゆっくりね…。」

なつ「頂きます。」

作画課

仲「なっちゃん マコちゃん。」

2人「はい。」

仲「ちょっと。」

仲「2人の絵を合わせて ちょっと描いてみたんだけど こんなので どうかな?」

なつ「すごい…。 どうしたら こんな絵が描けるんだろう…。」

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