連続テレビ小説「なつぞら」第71話「なつよ、千遥のためにつくれ」【第12週】

<そして 作画作業が佳境に入ったある日。>

坂場「下山さん すみません。 演出助手の坂場です。」

下山「は~い。」

坂場「ちょっと お聞きしたいんですが この動画は これでいいんでしょうか?」

下山「えっ? あっ 君か。」

坂場「これなんですが…。」

なつ「あっ カチンコ君…。」

下山「これ どうかした?」

坂場「これでいいんですか? この動画の動き おかしくないですか?」

下山「おかしい? うん?」

下山「おかしいかな? えっ ちょっと…。」

堀内「あっ。」

なつ「ん? あっ それ 私が描いた動画ですか?」

下山「うん そうだよ。」

なつ「何か おかしいですか?」

坂場「おかしくないですかと 僕が聞いてるんです。」

下山「君が答えていいよ。」

なつ「えっ…。 あの これは 馬が崖を下っていくシーンです。」

坂場「それは分かります。 牛若丸が 馬に乗る訓練をしてるところですよね。」

なつ「そです。 ものすごい崖なんで 加速して 地面が迫ってきます。 だから 牛若丸も馬も 怖がりながら走ってるんです。 そんで こういう表情になるんです。」

坂場「あっ いや あの… そこが分からないんです。 怖がっているなら なぜ 体が前に つんのめってるんですか? 怖がっているなら 体を後ろに のけぞらそうとしませんか?」

なつ「いや それでは 速く走っているように 見えないじゃないですか。」

坂場「どうしてですか? 速く走ってるから 怖がるんですよね?」

なつ「そです。 だから それを 表情で表してるんです。」

坂場「表情で説明していれば それで済むんですか?」

なつ「はっ? あ… 表情は説明なんかじゃありませんよ! アニメーターにとって キャラクターの表情は 大事な表現なんです。」

坂場「表現?」

なつ「そです。 見て下さい。 馬が 崖を下っていく動きに合わせて 牛若丸や馬の顔が 伸びたり縮んだりしてますよね? こういうのを アニメーションでは…。」

坂場「ストレッチ アンド スクオッシュですか?」

なつ「えっ…。」

坂場「ディズニーの原則ですよね。」

なつ「そです。」

坂場「そういう表現は 動きに リアリティーがなければ ただの説明になりませんか?」

なつ「それは 分かってます。」

坂場「だったら どうして こういう動きになるんですか?」

なつ「牛若丸の性格です!」

坂場「性格?」

なつ「この牛若丸は わんぱくなんです。 だから 怖くても後ろに引かないんです。」

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