中庭
桃代「なっちゃん? 久しぶり!」
なつ「モモッチ。」
桃代「お昼? 一緒に食べよう。」
なつ「うん。」
桃代「どう 動画の仕事は もう慣れた?」
なつ「まだ全然…。 実際やってみると 本当に 何も分かってなくて… 外で お昼ごはんを食べる暇もないくらい。」
桃代「今日は大丈夫なの?」
なつ「大丈夫じゃないけど 今日は何となく モヤモヤしてて。」
桃代「モヤモヤ?」
なつ「今年の新入社員で 演出助手の坂場って人 知ってる?」
桃代「ああ 東大出身の?」
なつ「東大?」
桃代「哲学を専攻してたって。」
なつ「哲学?」
桃代「そういう情報は 仕上課にすぐ回るから。 その人が どうかしたの?」
なつ「う~ん… そんな人に 生意気なこと言っちゃった…。 でも すっごく変な人だった。」
桃代「う~ん アニメーションにしかできない表現か…。 逆に言えば 何でもできるからね アニメーションは。」
なつ「そう… 何でもできるから やりたいことが分かってないと ダメなのかなって。 その坂場っていう人が言うとおり…。」
桃代「やりたいことって何?」
なつ「それが 自分でも何なのか 分かってないんだわ。 どこに向かって 絵を描いてんのか そんなことも考えなくなってたんだ 私は…。」
桃代「アニメーターになったばっかりで そこまで考えることないんじゃない?」
なつ「だけど 向こうだって新人だよ? こっちよりも…。 早く名前 出したいなんて よく言えたもんだわ。」
桃代「名前?」
なつ「あ… ううん 何でもない。」
作画課
<なつよ 早速 あの青年が 君に影響を与えたようだな。>