連続テレビ小説「なつぞら」第85話「なつよ、ワクワクが止まらない」【第15週】

夕見子「随分 幼稚なの読んでんだ。」

なつ「えっ?」

夕見子「これ。」

なつ「あっ それは 仕事のために読んでんの。」

夕見子「仕事?」

なつ「漫画映画の原作になるものを 探してるんだわ。」

夕見子「えっ あんた もう そんな仕事まで さしてもらってんの?」

なつ「短編映画だけどね…。 若手の育成のために 企画から 作らせてもらえることになったのさ。」

夕見子「へえ…。」

明美「で 何の話にするの?」

なつ「それが決まんなくて…。」

夕見子「そういえば… あんたら きょうだいって 『ヘンゼルとグレーテル』みたいだもね。」

なつ「『ヘンゼルとグレーテル』?」

夕見子「そう。 兄と妹の話だよね これ。 まま母に捨てられたきょうだいが 森の中で お菓子の家を見つける話だよね。」

なつ「うん そう。」

夕見子「ほら 深い森の中に連れていかれる時 兄は 帰り道が分かるように パンを ちぎって落としていくでしょ?」

なつ「うん。」

夕見子「あんたら きょうだいにとって そのパンが 絵なんだわ。」

なつ「え?」

夕見子「パンを落とす代わりに 絵を描いてんの。 それが 自分の家に帰るための 道しるべなんだわ! だけど そのパンは 鳥に食べられてしまって きょうだいは 帰り道を見失ってしまう。]

夕見子「その鳥は… そう 時の流れという名の鳥なんだわ! 時は流れて 子どもは いつしか 子どもじゃなくなっていく…。」

明美「ねえ 何言ってんの?」

夕見子「ねえ ぴったりっしょ! なつがやるなら これしかないべ!」

なつ「『ヘンゼルとグレーテル』…?」

居間

剛男「咲太郎君… 君らを こんな運命にしてしまったのは 私かもしれんな…。」

咲太郎「そうですよ。」

剛男「そだな…。」

咲太郎「だから 俺は 心から感謝してます。」

剛男「ありがとう…。」

富士子「さあ 飲んで。」

咲太郎「ああ すいません…。」

泰樹「咲太郎。」

咲太郎「はい…。」

泰樹「お前は ここまで よくやったな。」

咲太郎「えっ?」

泰樹「よく頑張って生きてきた…。 この先も 胸張って生きりゃいい。」

旧牛舎

悠吉「なっちゃん 腕は なまってないな。」

なつ「うん… これで また 当分できなくなるから しっかり この手に残しておきたくて。」

悠吉「本当に もう 今日戻っちゃうんかい?」

なつ「これ以上いたら 東京に戻りたくなくなっちゃうでしょや。」

菊介「だったら戻るな。 このまま ここさ いろ! 漫画映画を作りたければ ここで作ればいいべさ! この菊介さんが手伝ってやっから。」

悠吉「お前に 何ができんだ?」

菊介「なっちゃんの… 肩もみぐらいはできるべよ。」

なつ「ありがとう 菊介さん。 それ聞いて やっと戻る気になれたわ。」

菊介「いや そりゃないべ なっちゃん!」

(笑い声)

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